年も明けて新しいチームが徐々に見えてきている時期になってしまったが、
京都サンガの2016シーズンを見てきた自分が思ったことを備忘録として書いておく。
試合を見返したとかはせずに記憶と印象だけで書いてしまうので、間違っている所が出てくるかもしれないけれど、
それはそれで個人の感想としての面白みがあるんじゃないかと思う。
書いていく内容は思いついた順で、時系列的には前後している部分もあるのでご理解を。
◆17位→5位
前シーズンでは監督も選手編成もガタガタでどうしようもない状況だった。
そこから立て直してプレーオフ圏内にまで順位を上げられたことは評価される事でしょう。
特に強化部の働きはこれまでに無く良かったと思う。
即戦力を集めなければいけない状況の中で、
菅野、牟田、本多といったJ1でもスタメンを取れる選手を加入させ、
海外で居場所を失っていたエスクデロも引っ張ってきた。
名古屋グランパスでのスカウト担当を強化部に引き入れた事が一番の要因なのだろうが、
相手方のクラブの隙を見逃さずに能力の高い選手を獲得するといった巧妙な立ち回りを
京都サンガというクラブが仕掛けられた事に正直驚いている。
次に石丸監督について。
シーズン前に湘南で監督をしていたチョウ・キジェと契約寸前という報道があった。
実際そのとおりだったんだろうし、ぎりぎりで破談になった事は想定外と思われる。
要はすべり止めの監督候補としては次点だった石丸さんが監督を引き受けてくれた事には感謝している。
もし京都サンガのOBで無かったらこの状況で引き受けてはくれなかっただろう。
石丸監督の作ったチームは堅実だった。
逆に考えると試合中に変化の少ないつまらない試合をしていたかもしれない。
それでも試合からは試行錯誤している事は伝わって来ていたし、
良くなっている所もこれ以上は無理なのかという線も見えていた。
シーズン終わっての5位という順位はクラブの現在地としては適正な場所だと思う。
良いチームでは有るけれどもう一歩足りない。そんな順位でした。
◆チーム構築に苦戦する石丸監督
自分の記憶では石丸監督は6回チーム戦術を変えている。
シーズン中での戦術変更の多さがチーム構築に苦労していた事が見える。
ただでさえ新加入選手の多く、連携面で遅れがあるし、
監督の描く理想と選手タイプのミスマッチもあった。
監督が理想としていたのは幅を広くとってのポゼッション率を高めて相手を常に押し込んで
試合の主導権を取り続けるサッカーをやりたかったのだろう。
シーズン初期にやっていのが、4バックからボランチを下げて3バックに変化させ、サイドバックを高く上げるという形。
そしてその発展系として、アンドレイをトップ下としての振る舞いを与え、
前線からポジションを下げる動きをするエスクデロとの二人を攻撃の軸にするという形。
これらの戦術は上手く行った策では無かった。
京都の前線の選手はフィジカルに優れる選手が多い反面、狭い所でのプレーを得意とする選手がほぼ居なかった。
加えて両サイドハーフの山瀬と堀米を中にカットインさせる配置にしたことで中央で渋滞を起こして、攻撃が停滞する原因になった。
ビルドアップは上手く行って相手陣地まではすすめるけれども、そこからやたらと苦労するという試合をしていたと思う。
勝数としても9試合で2勝という先に大いに不安を与える結果だった。
戦術で大きな転機になったのはアウェーセレッソ戦。
相手攻撃陣が強力な事もあって縦に早いカウンター戦術に変更。これがハマった。
ヨンジェ、ロビーニョ、堀米の繰り出す高速カウンターは相手に脅威を与え、
縦に勝負する事によって奪ったコーナキックからの得点で試合を決めた。
次の清水戦の勝利もありチームとして一つの形が定まった。
9試合負けなしという好成績を残し、今一番強いのは京都サンガであると言われることも有るほどに充実していた。
好事魔多しという言葉がある。シーズンは長く1年間ずっといい調子というわけにも行かない。
負け無し記録の後には5試合無得点といった底の時期が着ている。
そしてこの辺りで再びポゼッション志向に変更している。
戦術を元に戻した一番の要因はカウンター時に真っ先に裏へと走り抜けるヨンジェが居なくなった事だろうけれど、
堀米、エスクデロのコンディション低下も相まって機能したとは言いがたかった。
どうして戦術を元に戻そうとしたのか分からない所もあるけれど、結局はそれが理想のサッカーだったからだろう。
石丸さんは戦術に凝るタイプに見えて色々と試している様子もあったのだけれど、
攻撃に関しては細かい所までは詰めきれておらず、最後の崩しは選手に任せるというJリーグの監督にありがちな感じになっていた。
そして、これは似たような特徴を持つ選手を集めてしまった編成の問題かもしれないが。
思い切った選手交代、配置変更で変化を起こしてひっくり返すという事も無かった様に思う。
シーズン終盤では。劣勢になった時に長身のキロスを入れてパワープレイという、
攻撃の引き出しとしてはちょっと寂しい戦術をとっていた。
シーズンを通して前に出てこずに守備を固める相手に対して有効な手を打つことが出来ず、
硬直した試合を打破できなかった事は石丸監督の評価する時の一番大きいマイナスポイントだろう。
ここまで攻撃面だけを上げてきたので次に守備の話を。
リードしている試合で3バックに変更して逃げ切りをする事もあったけれど、
基本は4バック。4−4の2ラインの守備をベースに縦横ともに距離を短くして、
相手が入り込んできた所を厳しく詰めてボールを奪う戦術だ。
これはキーパー菅野と守備能力の高いDFが揃っていた事、
中盤の選手が規律をよく守り、積極的に守備に参加していた事もあってよく機能した。
失点は2015よりも大きく減らすことが出来た。
石丸監督は理想を追った攻撃面ではいまいちな所があったが
やはり守備陣形の構築を最も得意とする監督なのだろう。
◆4バックor3バック
戦術的な話として、4バックと3バックの併用にトライしていた事も挙げておく。
石丸監督は愛媛で指揮を取っている時には常に3バックのシステムだったこともあって、
京都でも3バックシステムを敷くのも当然の流れだったと思う。
試合中にシステムを変更して機能させる事が出来るのならば、
それは試合をする上で大きなアドバンテージを持つ事になる。
相手のシステムによってスタメンの並びを変えて対応することも出来るし、
試合中にこちらから能動的にシステムを変えれば、強引に対応を迫らせることになり勝敗を分ける決め手になることも有る。
選手に高度な戦術眼を要求する難易度の高いチャレンジでは有るけれど相応の価値のある試みだ。
けれども今季の京都に関してはいささか難しすぎる状況だったように思う。
選手がほぼ入れ替わり連携面では0に近かったし、3バックを経験している選手も少なかった。
序盤戦、主に4バックから3バックに変えて守備面での強化を狙っていたが逆に選手が混乱してしまい失点数が増えてしまう結果になる。
3バックシステムを有効に使えたのはシーズン終盤になってから。
その時点ではぶっちぎり1位だった札幌に対して、
同じシステムの3バックを使いミラーゲームを仕掛けて失点0に抑えた。(試合は0−0の引き分け)
4バックでの守備も安定してきた時期で、同じように3バックでの守備もこなれてきて有効に使える場面が出てきていた。
それだけにシーズン序盤で完成度の低い状態で3バックを使い勝ち点を失っていたのは、いま振り返ってみれば勿体ない勝ち点だった。
3バックを併用することは間違ってなかった。ただ使う時期を間違っていたんだと思う。
石丸監督は意欲的に戦術的なチャレンジをする人で監督として自分は好みだった。
チームの戦い方の幅を広げようとしていたのは確かで、でも急ぎすぎていたきらいはあったように思う。
それはJ1に昇格しなくてはならないというプレッシャーが関係したのではなかろうか。
もう少し余裕のある状況であったらどういうプロセスでチームを作っていただろうかと思わないことは無い。
石丸さんは伸びしろが有るんだろうな、色々と惜しいな、と思わせる監督で、
そこはまだトップチームを率いるのが4年目という、監督のキャリアとしてはまだまだこれからという所もあるんだろう。
2016シーズンが終わりチームを離れる事になってしまったが、
監督の経験値を積んで策略家として名を上げて、
また京都で指揮を取るときが来るんだろう。きっと。必ず。