Take it easy

サッカーブログです。

自分なりにサッカーの捉え方を考えてみる。 状態遷移を更に拡張してみよう

シリーズ3回目です。状態遷移図をさらに拡張していきましょう。

 

tomex-beta.hatenadiary.jp

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この図を元に話を進めていきます。

 

◆状態遷移の難易度

ゴールを目指して状態⑤から①へと進めていくわけですが、それぞれの状態遷移の難易度には違いがあります。ゴールに近づくほど難易度は高くなり、それにしたがって「攻撃から守備の切り替え(ネガティブ・トランジション)」に移りやすくもなります。

状態遷移のしやすさを矢印の太さで表してみましょう。

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状態①(ゴール)に近づくと遷移が難しくなるとは、ゴールに近づくことで相手守備の強度が増してくることを意味します。ゴールラインに近づく事で使えるスペースも時間も限られていきます(カウンター時は除く)。そしてボールを失う可能性も高まる事を矢印の太さで表しています。

状態を一つ戻す矢印を付けているのは、攻撃の手戻りを示しています。次の状態へと移るのが難しくて「攻撃から守備への切り替え」局面に変わりそうなら、あえて一つ前の状態に戻すして攻撃をやりなおすという考え方があります。ボール保持を重視するチームによく見られる動きですね。

 

◆個人と戦術(グループ)

 状態⑤から①に近づくにつれて、状態を遷移させるためには戦術よりも選手個人の能力が占める割合が増していきます。

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実際に起こるプレーを例に上げると、キーパーとの1対1(②から①への遷移)や良いクロスを上げる(③から②への遷移)など、これらのゴールに近い状態でのプレーには(チーム)戦術の要素はほとんど無くなってきます。

一方で自陣低い位置からのビルドアップでは、ボランチが降りてきて相手FWに対して数的優位を作る(⑤から④への遷移)など、ほぼパターン化した動きを行ってボールを前進させているはずです。

通常、戦術と呼ばれるのは複数人で協調して行う動きです。協調した動きをデザインするのは監督の役割です。ですから上の図の戦術=監督としても良いのかもしれません。

「戦術で出来るのは1対1を作るまで」という言葉がありますが、これは監督が意図した戦術の影響力に限界があることを示しています。戦術と個人が組み合わさる事でゴールは生まれます。

たまに得点が取れない時に「決定力不足」と理由付けられる場合があります。ここで真に「決定力不足」と呼べるのは、状態②までは何度もたどり着いているけれども①に遷移させることが出来ていない現象を示します。状態②までたどり着いていないのに「決定力不足」と夜結論づけて思考を停止させる事が無いようにしたいですね。

 

◆カウンターと状態遷移、そしてゲーゲンプレッシング

サッカーにおいてカウンターは常に有効です。なぜ有効であるかというと攻撃を状態②から開始できるからです。

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カウンターの定義は「相手の守備が整う前に攻める」です。カウンターが出来たら状態②から攻撃できる、というよりは相手の守備陣形が整っていないから状態②から攻撃できるのがカウンター、という方が正確かもしれませんね。

カウンターを開始できると⑤~②までの状態遷移を一気にすっとばして攻撃できます。ゴールに近い状態から開始できるので有効という訳です。

カウンターは有効な攻撃ですが、相手が攻めてきてくれるという条件が必要です。そこで自分達から能動的に動いて、強引にカウンターの状況を作ってしまう発想が生まれます。高い位置でボールを奪い取りゴールから近い位置でカウンターをしかける、ハイプレス→ショートカウンターのコンボです。ハイプレスは相手が⑤や④状態の時にボールを奪いにかかる戦術です。可能性は低くはなりますが、成功するとカウンターを自ら発動できるという見返りが待っています。

 

ハイプレスをさらに推し進めた戦術にゲーゲンプレス(カウンタープレス)があります。

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ゲーゲンプレスは高い位置でボールを失った直後にすぐさまプレスをしかけてボールを奪い返してしまう戦術です。必然的にショートカウンターを狙うチャンスが生まれます。遷移図で表すと「攻撃から守備への切り替え」局面に遷移したのを「攻撃」局面に戻してしまいます。サッカーの4局面の循環を無理やり逆回転させてしまう、とっても強引な戦術です。

 

 ◆状態の一つ飛ばし

 攻撃は状態⑤からスタートして一個ずつ進めていくのが普通なのですが、

手数をかけずに⑤から③へと状態を一つ飛ばしてしおう、という発想もあります。

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 まず思い浮かぶ手段は、背の高いターゲットマンに対してロングボールを送りこぼれ球を拾うことです。どれだけ良いターゲットマンでも競り勝てるのは5割ほどでしょう。さらにこぼれ球を拾うのも確実性の低いプレーです。それだけ状態を一つ飛ばすには確実性を犠牲にしているということですね。

 

ところがCLに出るような欧州のトップクラブの間では、長くて高いパスを使わずに状態の一つ飛ばしを行う試みがなされています。「中盤の空洞化」と呼ばれています。CBやGKといった選手達のパス能力の目覚ましい向上と工夫されたポジショニングによって、後方から中盤を通さず前線に直接グラウンダーの縦パスが送られているのです。もはや状態④は必要なくなっているのかもしれません。それによってこれまで司令塔と呼ばれていた中盤下がり目の選手に課せられる役割も変わってきています。

 

◆まとめ:サッカーの評価は難しい

 自分の頭の中でサッカーをどんな風に捉えているのか考えながら書いてみました。

攻撃の局面について更に状態を複数に分けています。これはおそらくポジショナルプレーの影響ですね。解説記事によく「守備ラインを突破する」という表現が出ているので、そこに焦点を当てて抽象化を行って状態遷移図としてまとめました。

 

もちろんこれだけでサッカーを表現できている訳ではなくて、ここから更に分析を進めていくためのきっかけにしています。例えば得点が取れなかったという結果に対して、攻撃の局面でどの状態遷移に問題があるのか注目点を定めることができます。結果と問題を上手く結び付けられると修正するポイントも明確になるでしょう。

 

 サッカーという競技では内容と結果にあまり強い相関が無いと感じています。内容が悪くても勝ち点3を取ったり、その逆が起きることも日常茶飯事です。そのためにチーム状況を見誤ってしまうこともあります。実際に起きているプレーを正しく評価する必要があります。今回作成した状態遷移モデルをチームの評価を行うためのツールの一つになるかもしれません。