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2022年 J1リーグ 1節 京都サンガ VS 浦和レッズ レビュー 

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J1開幕

12年ぶりの昇格が話題になった京都サンガ。開幕戦のスタメンは去年のメンバーを軸に新加入選手を補完して行く形。浦和から期限付き移籍となる荻原と金子は契約上、出場できない。左SBには本来CBである麻田が入った。対面する酒井を警戒する意味もあるだろうか。GK、両CBは全員が新加入選手。彼らの働きに期待がかかる。

ちなみに12年前というと、南アフリカワールドカップが開催された年であり、アニメけいおん!が大ヒットした年でもある。

 

浦和は先週行われたスーパーカップで川崎に対して見事な勝利をあげ、優勝候補に名乗りを上げた。しかし週中でコロナ陽性者が出てしまい、トレーニングが満足に出来なかったようだ。当然この試合のスタメンはベストとは考えにくく、難しいやりくりがあったのは想像に難くない。酒井や西川といったビッグネームにたじろぐも、馬渡、明本、江坂といった見知った顔もちらほら。

 

想像とは違った序盤

キックオフ直後、主導権を取りに行った浦和は左サイドの明本をターゲットにしならが縦への勢いを強めにする。京都もポゼッションからサイドへのクロスへとつなげるのに成功し、松田のヘディングシュート。お互いにゴール前に迫る場面を作り出す激しい展開。

お互いの立ち位置を整頓すると、京都がボール保持する場合、昨シーズンと同じ様に、両サイドバックを高い位置に上げウイングが中に絞る2143のような形。それを受ける浦和の守備隊形は442。両サイドを下げて安居が前にでる。積極的にボールを奪いにかかるというよりは、京都が実際にどう出てくるかの様子を見ている様だった。

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一方で浦和のボール保持では、柴戸がアンカーになる、伊藤が前にでて安居と共にインサイドハーフ(IH)となる4123。左ウイングの明本はサイドに寄った位置をとる。これは大外のレーンを使うというよりは、京都右SBの白井と勝負する姿勢。左SBの馬渡は明本のサポート役として振る舞う。変わって右サイドでは、酒井という大駒を利用すべく、関根は内よりのポジションをとる。

京都の守備陣形は451であるが、ウイングは積極的にプレスを掛けに行くので、433の様にも見える。ラインは高く、全体をコンパクトに保ちたいという意思を見せているのが印象的だった。

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浦和のリカルド・ロドリゲス監督の基本的な思想はホールを持つことであるが、この日は意外にもロングボールを裏に蹴ってくる場面が多くなっていた。京都のハイラインの裏を狙いたいという積極的な理由というよりも、むしろ京都のプレスに苦労したという消極的な理由であった様にも見える。京都は前線の選手の2度追い、CBが前に出てのマンツーを行い、浦和のDFラインに息をさせないプレスを成功させていた。プレスを書けることで、精度の低いロングボールを蹴らせる、跳ね返す、ごちゃごちゃを気合でなんとかする、京都は狙い通りにループさせていたように思う。ビルドアップに苦労する浦和であったが、それでも頭を越すパスを難なく通して、戦況を一気にひっくり返す西川のキックは流石であった。

 

互角の勝負にするために

前半戦、京都が浦和に対して十分に対抗できていたのは、ひとえにコンパクトな陣形を実現できていたからだろう。DFライン陣が勇気を持ってラインを高く保つだけでなく、横方向の距離も短く保つ。ここにはキャンプ時から導入されていた一つの仕組みがある。

 京都は3日、メディア公開練習を行った。ピッチを縦に7分割したラインを引いてサイド攻撃の意識を高めるなど1時間30分の汗。

プレシーズンマッチの相手変更も、京都チョウ貴裁監督「試合ができなくて残念なのはガンバさんも同じ」― スポニチ Sponichi Annex サッカー

いわゆる7レーン。端的に言うと、奪われた後の絞りを速くするため、攻撃時に横に広がりすぎないようにする目安となる。これによって縦横どちらにもコンパクトな陣形を実現する。

狭い空間を作ることで、次々に選手がボールに食らいつくプレス戦術を可能にした京都。また、ボールを奪い返してカウンターを仕掛ける、一旦落ち着いてボールを動かす、どの局面であっても、狭い空間でのプレーに勝機を見出しているようだ。サイドチェンジを行うと、逆に京都が不利になるという切ない場面があるように、スペースがある状態で単純な個の勝負であるとやはり分が悪いのは見えていた。ただ当然、狭いスペース、早いテンポでのプレーは精度に問題が出てくる。そうした拙攻が続いていたが、いくつかチャンスの場面も作れていた。

注目は31分と42分、対比するようになるが、共に浦和の間延びした陣形をついたものだ。浦和のDFラインは背後を気にしているのか押し上げが控えめ。どちらの場面も前線がプレスにいった所で後ろがついてこずにスペースが出来てしまった。もしかすると、スーパーカップのスタメンから岩尾とショルツが外れた影響がここに出ているのだろうか。とにかく、試合を通して解消されなかったのは気になった。

ちなみに京都の場合、DFラインの前でボールをフリーで受けられると、DFラインはそのまま下がるその間に中盤3人が戻ってなんとかする、というそれは設計と言うのかという感じだったが、無理やりどうにかしてしまう位に走れる中盤3枚であった。

 

後半開始

ウタカのシュート、明本のシュート、と慌ただしい後半が開始。そんな中で先制したのは京都。右サイドスローインから川崎がPA奥への侵入に成功。ウタカのテクニカルなシュートが決まった。ちょうど先週の試合で浦和の1点目と似たような形だったのが面白かった。マイナスクロスからのシュートを防ぐのはかなり難しい。川崎の飛び出しで勝負ありであったかもしれない。

ここから京都ペースにというのは淡い期待に終わり、浦和の反撃が始まる。52分、CB犬飼がこの試合初めてとも言えるドリブルでの持ち出しから、サイドへ展開。明本から江坂へのクロス、シュート。3つのアクションでゴールに迫れる浦和。そうして一番怖い酒井が積極的に上がってくるようになる。

ウタカも守備に走り、メンデスが1対1をなんとか凌ぐ。危ない場面が続く京都。浦和からするともうひと押しという雰囲気が出てところで、両チーム選手交代。

浦和は秘密兵器の小泉を投入。京都は接触があった白井をなんでも出来つつある長井に。疲れの見えた豊川を大前にチェンジ。対面が酒井になるが大丈夫だろうか。

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中盤に小泉が入ったことによって、その巧みなターンによって京都のプレスを空転させる。京都も流石に運動量が落ちてきたために、押し込む浦和、カウンターを狙う京都と、様相が変わってきたのもこの時間帯。

70分、酒井のPA侵入に大前がついていけず、72分にはこぼれ球を拾われてシュートと、かなり際どい場面を作られる。ウイングでの大前はどうなの?というのも隠れテーマになっていそうな展開。確かに見るべきものはあるけれど、守備の収支を考えるとちょっとむずかしいかも。それを言ったら酒井相手には誰でもそうなるかもしれないけど。

74分。流石にまずいと見たのか動く京都ベンチ。武冨を福岡に交代。大前のポジションを右に移し、松田のポジションを左ウイングに。そして右IHに福岡。左IHに武田。ここまで書いてなかったが、武田を右IHに置いていたのは不思議。ずっと窮屈そうだった。

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さらに77分。荒木と木村を入れて5バックに移行。完全に逃げ切り体制にはいる。もう左サイドは頑張って走れという事だ。

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ゴール前のスペースを埋められると苦しい浦和。ショルツ、松崎、大畑を交代でいれるも。状況は変わらず。京都の時間稼ぎも実りタイムアップ。京都はホーム開幕戦を見事に勝利した。

 

完走した感想

痛い星を落とす形となった浦和。あとから聞いた話ではショルツの欠場はやはり痛かったようだ。中盤の交通整理役としては岩尾、小泉、平野と名前が挙がるけれど、ショルツの替えは効かない模様。特にラインを高くできないのは相当痛そうな気がする。そして途中から小泉が出てきてから試合の様子が変わったので、こちらもスタメンで出れたら試合の結果はどうだっただろうか。後から言ってもしょうがないのだが、新型コロナウイルスの影響は大きかった。首都圏のクラブであることが予期せぬマイナスを生むことになってしまったのは、なんという因果であろうか。ここから先も苦しむ様な気がする。

 

京都にとってはこれ以上無い結果。自分たちのスタイルを完遂させただけに、価値ある勝利。印象に残った選手はメンデス。甲府時代から割と器用な選手だとは思っていたけれど、縦パスを通したり、守備での対応もミスなしで文句無しの出来だった。J1に上がる事によって天井効果がうまく外れたようだ。

この試合の京都は、まるで決勝戦であるかの様に選手達はタフに試合をしていた。ウタカがこれほどエネルギーを出して試合をしていたのを初めて見たかもしれない。それだけやって、初めて互角の勝負ができるというJ1のレベルを実感させられた。

その一方で、同じ様なテンションを続けられないだろうという予感もある。この試合では、選手同士の接触により倒れ込む場面が多くあった。限界まで出そうとしていたのは明らかで、怪我人が多数出てもおかしくなかった。(実際に大前、酒井は負傷してしまった。)

京都にとってはそれほどに重要な一戦だった。J1未経験の選手が多く、本当にやっていけるか?という不安を払拭する必要があったからだ。

3 DF
麻田 将吾

何度かやられた場面はありましたが、代表クラスの選手を相手にプレーできて楽しかったですし、これを良い経験にして次の練習から活かしていきたいです。

試合情報|京都サンガF.C.オフィシャルサイト

この様なコメントができるのも、試合に勝ったからであり、この自信をつけるためにも、絶対に試合に勝つ必要があった。開幕戦に掛けたエネルギーの見返りは十分得られたのではないだろうか。