Take it easy

サッカーブログです。

2025年 J1リーグ 第一節 ファジアーノ岡山 VS 京都サンガ ~どうしてこうなった!?繰り返される悪癖~

 

2025年シーズンも開幕となった訳ですが、前年の後半戦の勢いから期待された京都サンガでしたが、初昇格の岡山に足をすくわれる形となってしまいました。ネット上を眺めていると、失望と落胆が入り混じった感想ばかり。見ている自分も全く同じ感想です。今回のレビューはそんな試合の「どうしてこうなった?」への考察集としてまとめさせていただきます。

岡山側視点の方は、既にいくつかレビューがアップされていますので、そちらにお任せしますね。

【はじめてのJ1】2025 J1 第1節 ファジアーノ岡山×京都サンガ|たか

【試合考察】ファジアーノ岡山vs京都サンガ J1第1節|Zerofagi

【ファジサポ日誌】143.この街とトモニ ~ 第1節 ファジアーノ岡山 vs 京都サンガF.C. マッチレビュー 〜|雉球応援人

 

 

 

27:10 やばい守備はどうして起きたのか

 状況としてはセットプレーで先制点を奪われ、チーム全体が非常に混乱していた時間帯でした。岡山陣内の低い位置から送られたロングボールは、サイドに開いた全くのフリーの江坂へ。そのままクロスから決定的な場面が作られました。

プロの公式戦ではちょっと見られないほどの守備のエラーです。この時、京都に一体何が起こっていたのでしょう?これには順を追って説明していく必要があります。

京都は積極的にプレスを掛ける戦術をとります。もちろんこの試合でも同様なのですが、フォーメーションの噛み合わせ上、SBが相手のウイングバックに当たるので、全体のバランスを保つために工夫をする必要がありました。

右SB(宮本)が前に出ると共に右CB(ウィリアム)がスライド、そして守備ラインのスペースをアンカー(ペドロ)が埋める。一連の動きを約束事として相手ウイングバックへの対応を行っていました。つまり、宮本とウィリアムとペドロは一つのユニットとして動く必要がある訳ですね。

問題のシーンに戻りましょう。この時、右SBの宮本はプレスを掛けるために前にでます。ところが、ペドロがDFラインの近くにいないため、ウィリアムは先ほどのルールに従ったサイドへのスライドを実行することができません。結果的にサイドに開いた江坂を誰もマークすることができず、ロングボールを通されてピンチを迎えます。

この場面での問題点は次の2つになるでしょうか。

 ①宮本は江坂をフリーにしてまでどうして前に出てしまったのか。

 ②DFラインの穴埋めタスクがあるはずの、ペドロはなぜ前方に移動していたのか。

ますは①の検証です。この場面の一瞬前にマルコが相手左CBに対してプレスを仕掛けています。宮本としてはその動きに連動して、相手ウイングバックに寄せるという判断をしたと思われます。もし、マルコがあっさりかわされたりしなければ、ボールの出しどころを奪うという意味で宮本のプレスは成功したかもしれません。ただ、自分の背後にいる相手をフリーにしてまで、実行するほどだったのかというと疑問に感じます。

続いて②について、この場面の前、京都がボール保持する時間があったのですが、中盤3人はポジションを移動していて、右から、ペドロ平戸川崎と本来のスタートポジションとは違った立ち位置になっていました。この状態から守備を行うことになり、相手ボランチ二人に対して、べドロと平戸が見る形になってしまい、自然とペドロのポジションは前に移すことになります。この位置では当然ウィリアムがDFラインの穴埋めをするタスクをこなすことはできません。代わりに川崎がアンカーの位置まで下がっていたのですが、ペドロの代わりに川崎がDFラインの穴埋めをする役割までこなすような約束事になっていたかというと、そうではないのでしょう。(川崎がDFラインに入る意味があるのかというのは別にして)

①と②、どちらの場面でも守るべき守備のルールがあるはずなのですが、起こってしまったエラーになります。原因としては、とにかくボールに寄せるというチームの最優先事項が、選手の判断に矛盾を生じているように思います。特にペドロですね。DFラインへの穴埋めを意識しつつ、眼の前の選手にはプレスを掛ける、という2つの矛盾した守備タスクを課せられている事になります。その板挟み状態に加え、攻撃時にはボールに絡み積極的に前にでる意識が強い。この環境では彼に課されたタスクをすべてこなすのは至難の業では無いでしょうか。役割をもう少し限定させて整理するか、周囲の選手がもっとコーチングして彼の動きをコントロールすべきでしょう。

この場面を検証していると、それぞれの選手がとった行動にはそれなりに理由があるのですが、それを組み合わせてチームの動きとして見ると不具合を起こしているのがわかります。この問題の原因を局所化せずに、チーム全体で向き合う問題として取り組み解決に向かえば、良い教訓だったと振り返る事ができるのではないでしょうか。

川﨑はなぜ右サイドに居たのか

この試合、右IHで出場した川崎が右サイドいっぱいに開いた位置を取る場面が多く見られました。「え?そこはマルコのポジションじゃないの?」そうですね、昨年の快進撃の要因として、右サイドに開いたチャンスメーカーとして活躍したマルコの存在がありました。それでは、なぜこの試合では川崎が右サイドに開いていたのでしょう?

どこかの新聞記事にあった監督インタビューで「クロスに対する人数を増やしたい」というニュアンスの言葉がありました(うろ覚えで申し訳ない)。この「人数を増やしたい」というのが川崎のポジショニングに影響していたのでは無いかと思います。

マルコの位置取りが顕著だったのですが、この日の3トップはとにかく中央でのプレーが多く、またボールを相手陣地に進められたときには、早々にペナルティエリア内で待つという動きも見られました。一応、エリア内に人数を増やしたいという発言との整合性は取れているように思います。一方で、マルコや原がサイドに開くことが少なくなったため、クロスを上げようとすると誰かが変わりに動かなければいけません。そんなわけで、川崎が頻繁にサイドに出ていき宮本と共にサイドアタックを仕掛ける事になりました。

ただ、川崎がサイドに出たところで、ねえ。ドリブル突破を期待できるタイプでも無いですし、味方を使うプレーも得意かと言うとそうでも無いです。実際にチャンスらしいチャンスは作れなかったんじゃないかと思います。それに加えて、サイドに出ていってしまうためにクロスのこぼれ球争いに参加することができず、本来の強みであるトランジションでの強さを発揮する事もできなくなってしまいます。岡山の出足が良かったとはいえ、川崎の不参加は中盤でのこぼれ球争いに後手を踏んでいた原因の一つであるとも思います。

ポジションチェンジ、可変システム。非常に聞こえの良い言葉ですがポジションを移動した先で効果的なプレーができないというのは、ポジションチェンジあるあるです。それを考慮していなければ、ポジション移動はむしろマイナスに作用し、相手を楽にさせますね。この試合の川崎はポジションチェンジの落とし穴にはまってしまったと言えます。一つ一つのアクションにはそれなりの理があっても組み合わせると不具合が生じる。先程説明した守備でのエラーと似たような物なのかもしれません。

過去そうであったように、開幕後やシーズン半ばの中断後にこういった仕掛けを打つのことがありあます。もちろん上手く行けばよいのですが、攻守のつながりが意識されておらず、上手くいかなかった時に現れるリスクを隠しきれないために全体のバランスを欠いてしまい、リスクとリターンの収支があっていないケースが散見されます。これはもう監督の悪い癖というしか無いですね。

京都はこの試合をどうしたかったのか?

戦術面もそうなのですが、それ以上に選手のコンディションの悪さが気になりました。動けていたのは平戸くらいでしょうか。体が重たそうに見えましたし、ボールの競り合いになかなか勝てません。そして持ち味であるはずのスプリントもあまり見られませんでした。よく動けている岡山の選手達と比べると、その動けなさがより強調されていました。

もう一つ、こう言ってはなんですが、いつもよりも手際よく感じられる選手交代が行われました。

 45分 ペドロ→福岡、宮本→須貝

 60分 マルコ→奥川、川﨑→中野

 75分 エリアス→米本

以上、区切りの良い時間から察するに、試合の状況に合わせて変えたというより、時間で交代することを事前に決めていたのだと思われます。負けている状態での交代をエリアスが素直に受け入れている様子からも、そう感じました。

 

リスペクトに欠けていてあまり言いたくないのですが、京都はこの試合、半分コンディション調整の場として使っていたのでは無いかという嫌な考えが頭をよぎります。ペドロ、ウィリアムをスタメンで使ったり、奥川と中野30分だけ使ったり、新しい戦術的な事を試したりとかもですね。なんとなく、岡山相手ならこれくらいで行けるんじゃ無いか?という欲にも似た弛緩した空気があったのも、練習試合ぽい雰囲気を作り出していました。

もちろん実際のところはわかりませんが、結果としては足をすくわれる形になったのは事実です。次がホームの浦和戦。続いて神戸、川崎といった強豪相手の連戦が続きます。強い相手とは言え、この試合のような失態を見せるわけにはいきません。より一層シビアな目で見られることになります。そういった意味で、いきなりの大きな山場を迎えてしまったと言えるのでしょう。

 

再現性のある攻撃とは

最後にちょっと岡山について。

岡山のスカウトが京都VS愛媛の試合を観に来ていたそうなのですが、その成果なのかよく研究しているなと感じられる場面がありました。

この試合、岡山は得点パターンとして、左でボールを運んで右で仕留めるというプランを立てていたように見えました。2点目のシーンが分かりやすいですね。左シャドーの江坂から右サイドに大きな展開。右ウイングバックの柳が折り返してボレーという形です。この形、前半だけで何度も現れていたんですね。時間で示すと、13:50、27:10、31:50、35:47、39:20の五回ですかね。もっとあるかもしれません。いずれも左でボールを運んだ後に右サイドに大きく展開してシュートまで持っていったパターンです。おそらくですが、京都の左ウイングの原大智が守備にはあまり戻ってこないという、京都の抱える弱点を狙って組み立てた攻撃だったのでしょう。

この攻撃の鍵となったのは、右ウイングバックに入った柳です。ウイングバックというポジションの役割上、自陣まで戻って守備をするのですが、先に挙げた5回のチャンスシーンではいずれもしっかりゴール前に詰めていました。岡山の攻撃陣でいうと、パワーのルカオと技術の江坂が目立つのですが、この攻撃パターンを成立させるのには戦術的なインテンシティの高さが必須になりますが、柳は見事にそのオーダーに応えてチャンスを作り続けていました。あんまりシュートは得意そうではなかったのですが、それでも得点に結びつけられたのは、何度もトライできた岡山の攻撃の再現性の高さから来たものです。素直に褒めたいと思います。