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2025年 J1リーグ 第5節 京都サンガ VS アビスパ福岡 ~思った以上に大きな歪み~



 

アビスパの原大智対策

全体をまとめると、アビスパの京都対策がはまった試合であった。

京都は後方からの前進するためにロングボールを多用する。ターゲットは原大智。今季は空中戦勝率が5割を越えるほどターゲットマンとして機能している。ロングボールをより効果的に使うために、CFのエリアスが相手DFラインを牽制するように立ち位置を取ることで、原大智が競り合う相手を相手ボランチに設定することになり、高い空中戦勝率を上げる要因となっている。競り勝つ可能性を高めることで、相手DFラインは後方に下がらざるを得ず、前後に間延びさせることで中盤のこぼれ球争いを制しようとするのが、京都の基本戦術となっている。

 アビスパは京都にペースを握らせないために十分な対策を取っていた。守備時の陣形は523、原大智へのロングボールの相手をさせられるボランチは無理に競り合わず、まず飛ばせない様に体を抑えることに注力していた。原大智に十分な体勢でジャンプできないようにすると、続いてDFラインからCBが飛び出して跳ね返す。1人相手に2人掛かりで止めに来る作戦なのだが、それだけ注力するだけの価値があると考えていたのだろう。実際にその策は功を奏し、次々とロングボールを跳ね返すことに成功していた。

 前進の第1案を阻止された京都は苦手なショートパスをつなぎ前進を強いられる。アビスパも京都と同じくプレスからのショートカウンターを得点源とするチーム。何度となくカウンターを受けピンチを迎えていた。アビスパのカウンターの鍵となるのは右シャドーの紺野。アビスパのエクストラプレイヤーは自身の強みを活かす術をよく理解している。自チームの守備時に守備ブロックに入るのでは無く、カウンターの起点となるために曖昧なポジションを取っている。味方がボールを奪った後にフリーでボールを受けられる位置を探しつつ、ボールを受けるとスピードに乗ったドリブルで京都守備陣を何度も脅かしていた。京都GKの太田と守備陣の奮闘でなんとか失点は免れていたものの、アビスパの試合だったのは間違い無いだろう。

京都はロングボールの前進が難しくなっていたが、それでも平戸と福岡の巧みな連係で前進を進めていたのはさすがであった。独力でボールを奪い、奥川の反転シュートにつなげたエリアスの個の強さも目を引いたし、平戸のFKが防がれたのは相手GKを褒めるしかなかった。とはいえ、チャンスは個の力で生み出すものに留まり散発的なものであったのは残念なところか。

結局京都は、起きていた問題(=アビスパの対策)に対する解決策を見つけられることができなかった。どうしても対比になってしまうが、京都はアビスパ対策をどう考えていたのか、それはつっこみを受けても仕方がない。

歪さを生む右ウイング

スタメン右ウイングのマルコが怪我をしたことで、左から右にポジションを移った原大智であったが、チーム全体に影響を及ぼす歪さを生む原因にもなってしまっていた。もちろん彼だけの問題でもないのだけれど。

体感としもそうであるが、京都の攻撃は右サイドに偏っている。これは右SBの福田の攻撃力を活かすためだろうし、須貝も同等のクオリティを発揮している。他には、DFラインと中盤も右利きの選手ばかりで、単純に右側にボールが動きやすいというのもあるがそれは置いておこう。

 前節から右ウイングには原大智がいる訳だが、前述の原大智へのロングボールを前進の第一とする方針と配置のかみ合わせが非常に悪い様に見えた。元々中央でのプレーを志向する選手ではあるが、ターゲットになるために原大智は中央のポジションに居てもらう必要がある。ところが、そうすると右サイドで幅を取る選手が居なくなってしまうのだ。

上の図はこの試合で起きていた象徴的な場面。右サイドバックの須貝がボールを受けたがパスコースが見つからずプレスをまともに受けてしまっていた。

原大智が左のポジションであった時には、中央に居てもさほど問題は起きなかった。右には幅を取ってくれるマルコが居たからだ。幅を取る選手がいることでボールを安全に前に運ぶことができ、複数の選手と連係を取ることで、右サイドの攻撃が成立していた。原大智を左から右に、単純なポジション入れ替えの様に見えたが、右サイドからの攻撃=京都の攻撃が停滞する原因となってしまっていた。
 攻撃面だけでなく守備面でも問題が起きてしまっていた。実況解説が原大智の守備への貢献を誉めていたのだけれど、運動量的にかなり無理をしているようだ。実際に後半になると守備をさぼる場面が目に付き始める。ちょっと良い方が悪くなったが、要は休憩が必要になるということだ。そして、この少しの歪みが悪い連鎖を起こしてしまう。右IHに入る川崎が、休憩する原大智の代わりに守備をがんばろうとしてしまうのだ。責任感の強さがそうさせてしまうのだろうが、相手DFラインに対してプレスを掛けるため無理に前に出ていくことで、前に川崎、後ろに原大智という意図しない入れ替えが生じてしまっていた。そうしてできたスペースを利用されてしまっていた。右サイドで原大智と川崎の組み合わせは、守備をさせるには単純に相性が悪いように思われる。

62分には守備の綻びを突かれて大きなピンチを迎えてしまったのだが、この場面は初戦の岡山戦で驚くような守備のエラーが起きた場面とほぼ同じ形であった。登場人物が変わっているにも関わらず、同じやられ方をしてしまったのは、チーム自体の問題が解決していないことを示している。

想像以上に痛いマルコの不在

改めて感じたのは、マルコが居ないことによるチームへの影響が思ったよりも大きいことだ。ACL絡みのフロンターレ戦ではなんとかなったが、アビスパの様に対策を打ってきた相手に。原大智が守備に帰ってくるのを褒めている場合ではない。マルコの復帰がどのくらいになるかわからないけれども、解決策を見つけられないと、攻守にわたって問題が起きている状態での試合を乗り切るのは大変難しいのではないか。

 一つ提案として、ウイングの左右を入れ替えるのはどうだろうか。右サイド偏重攻撃のベースを変えるのはいまさわ難しいと思われるので、とりあえず奥川には右サイドで張ってもらい攻撃の起点としての役割を与える。左の原大智はこれまでどおりのプレーをしたら良い。問題が無いわけでは無いが、右サイドにいるよりはずっといい。

 

色々と感じた所を書いてみたが、この試合で一番辛かったのが、アビスパの方がトランジション(攻守の切り替え)の質が高かったことだろう。ボールを奪った後に正確に味方に繋ぎ前進する。京都が本来目指して居たところが上回られた事は大いに反省すべきで、もう一度自分たちのやり方を見直す必要があるのではないか。途中交代の選手が当てもなくさまよって全然効果的じゃなかったというのもあったけど、それはまあそんなもんでしょう。