開幕戦はいつもよりも早い時期の2月開催。カレンダーを見ても水曜日開催は少なく、スケジュールの余裕を持たせるためだろうか。新型コロナによる試合延期を踏まえたものかもしれない。
京都サンガのスタメンはおおむね昨年の主力がそのまま。左サイドには福田、木村の大卒選手がスタメンを勝ち取った。
一方の鹿島は、PSMでの不調に気になるところだが、スタメンの並びに変化をつけてきた。新加入の知念、藤井が両ウイングに入り、アンカーには町田から加入の佐野海舟。期待の大きさがうかがえる。
開幕戦を34分の1以上にできるのは、果たしてどちらのチームだろうか。
開幕戦への心構え
キックオフ直後はお互い前線をターゲットにこぼれ球を拾いある強度の高い展開。京都は自身のスタイルであるし、鹿島は開幕戦のテンションの高さから来ていそうだった。それでも徐々に鹿島が押し込む展開に試合は進んでいく。
鹿島が見つけた優位性は、ワントップ鈴木優磨と左ウイングの知念。表記上は3トップであるけれども、この二人が実質的に2トップであり、比較的自由に動きたい鈴木と元々は中央が主戦場の知念が入れ替わりながら攻撃の起点となる補完関係も見せていた。一方で3トップ右の藤井は純粋なウイングであり。鹿島の前線は非対称な3トップと言える。
京都のDFラインがこの3トップに悩まされているのが印象的であった。鈴木と知念にはラフなボールでも収められてしまうし、藤井からもクロスが飛んでくる。解説に言われた通り、非常に混乱した状態であった。その流れから1つ目のCK、京都からすると何が何だか分からないうちに失点してしまう。月並みな言い方ではあるが、この試合に対する熱量の差が出てしまったようだ。
進化を見せたい京都
失点後から、なんとか試合を作りたい京都は、昨年とはちがう方向性を見せ始める。ゴールキックが分かりやすいが、守備ラインから縦に当てて行くのではなく、中盤三人がそれぞれにDFラインまで落ちる動きを見せ、ショートパスによるビルドアップを試みる。GKを使うこともあったが、ボールの行方を見ると左SBの福田に集まりがちであった。これが意図的なものだったのかは不明。福田は右SBが本職なので、慣れない役割を強いられているようで、少しかわいそうだった。
京都は何度かハーフウェイラインを越えることはあったが、京都の出方を見て中央占めて構える鹿島の守備に対して、アタッキングサードまではなかなか進めず。ボールを奪った鹿島は、手をかけずトップの鈴木優磨に当てる。これはビルドアップでも似たような傾向があった。京都のプレス対策か、CBの技術の問題であるかは分からないが、CBやGKはあっさりロングボールを蹴る。ただ、依然として京都CBに対して質的な優位を見せ続ける鈴木優磨や知念がいる限りこれで十分。
25分あたり、京都はボール保持で新たな布陣を見せる。ボールを持つCBに対し、両サイドバックは高い位置を取りスリートップは中に入る。数字の表記は235。また、武田がサイドチェンジを繰り返し、幅広く攻撃を展開したい意図を見せる。それに対して鹿島の両ウイングはDFラインまで戻り穴を作らない集中力を見せて対応する。時折、木村が独力で打開しようとチャレンジしているのは立派であった。
しかし京都のチャレンジは報われず、ゴールキーパーからのビルドアップの流れを鈴木優磨に狙われ失点。怪しいプレーを見せていた福田、鈴木優磨による心理的プレッシャーを受け続けた麻田の両名を標的にした、マリーシアとも言える鹿島の鹿島らしい得点だった。
鈴木優磨のパフォーマンスによる警告を挟み、京都は反撃のためにエネルギーを出し始める。ただそれはスクランブルアタックとも言える姿勢で、もうチャレンジをしている場合ではない!という選手からの叫びのようだった。ただ、その焦りとも言える勢いを的確に切ってくる鹿島の落ち着きは流石であった。
勝ち点にこだわる後半
ハーフタイムに京都は3人を交代。豊川→一美、福岡→アピ、木村→パウリーニョ。システムも3421に変更する。サイドバックの左右を入れ替えたのは、藤井対策だろうか。
前半同様、立ち上がりは激しいボールの奪い合いとなったが、徐々に京都がペースを握っていく。後ろの人数を増やしたことで、ボール保持が安定したこと、シャドーに入った一美とパウリーニョがライン間でボールを受けて、ビルドアップの出口となった。
さらにパトリックを入れて攻勢を強めるところ、鹿島は433から442へシステム変更。藤井が左SHとなる。狙いとしては、ライン間を使われるのを嫌って44の隙間を狭くすることだろうか。このあたりで試合は膠着状態に。スリーバックで対抗する京都守備にペースダウンした鹿島は思ったような攻撃は仕掛けられず、かといって京都も有効な攻撃をしかけられては居なかった。スコア状況をみると、この展開は鹿島の狙い通りだろうか。
後半の京都で目を引いたのは一美。落ちる動きによってビルドアップの出口となり、安定したキープ力でボールを失うことなく味方につないでいく。シュートを自分で打つという意識もあり、この試合では途中投入であったが、今後チームの中心になることを予感させる出来であった。
京都は最後の交代枠として福田→谷内田。システムも433に戻し、最後の反撃に出ようとしたが、麻田がSBに入るという苦しい変更であり、試合はそのまま終了。開幕戦は鹿島の勝利となった。
ひとりごと
京都は昨シーズン後半での閉塞感からモデルチェンジを図る意思は見えた。すなわちボール保持からもっと意図的な崩しを!ということになるのだが、そのチャレンジは裏目となり、一番恐れていたバックパスミスからの失点となった。前半の選手たちの振る舞いを見ていると、やろうとしている事への自信につながる根拠が持てていないように見える。また、試合展開がそうなったからな仕方が無いかもしれないが、チャレンジをやりきるという割り切りがそれほど無いようなのも気になってしまった。可能性を見せてくれる選手は居る中で、チームの目標としている姿はどこなのか、そこに向かうための覚悟がどれだけあるのか。京都は早々に決断を迫られてしまったのでは無いだろうか。