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2023年 J1 第9節 京都サンガ VS サガン鳥栖 ~立ちはだかる4月の壁~

今年はきついと言われ続けながらも十分な成績を残し続ける鳥栖。垣田、宮代、ジエゴといった主力が抜け、いよいよきついのではと思われた2023年。それでも絶望的な結果には至らず、踏みとどまっているのはJリーグ7不思議の一つと言って良いかもしれない。愛媛時代を知る者としては、川井監督がJ1で活躍しているのは喜ばしい。スタメンには元京都の岩崎が、控えにも堀米がいる。佐藤響の古巣でもある。

前節のガンバ、ルヴァンカップでもセレッソに快勝し、リーグ戦連敗の流れを断ち切った京都。新加入選手の活躍もあり、選手層を地道に厚くする作業中でもある。消耗の大きい前線3トップの並びは試合ごとに代わり、ターンオーバー的な運用も出来つつある。パトリックがすでに結果を残している中、他の選手の奮起にも期待がかかる。

 

キックオフからしばらくはお互いにタフにボールに競り合う局面が続いたが、3分ごろのゴールキックから、お互いのビルドアップのスタイルがはっきりする。ビルドアップとは自陣から敵陣まで前進する過程を示すが、京都は前線のターゲットに当ててこぼれ球を拾って前進を図る。一方で鳥栖はGKから短くつなぐ事を選択する。鳥栖のビルドアップ対京都のハイプレスという図式であり、大変見ごたえのあるもので、序盤の攻防はここにほぼ集約される。

鳥栖のビルドアップは、GKの脇にCBが並び、大外に開いたSBとボランチ2名の計7名。それに対する京都は3トップ+2IHの5人でプレスを掛ける。

京都3トップは中央へのパスコースを警戒しながらボールに寄せていく。そうして、GKからSBに出された比較的長めのパスが通るまでの時間を利用して、IHがSBにプレスを仕掛ける。そうしてピッチ端で行き場所を無くすと同時に、アンカー川崎を始め、DFラインもサイドに寄せる事でボールを奪う狙いのようだった。3分のあたりで、最初の対決があるのでが、これは京都のプレスが勝利。ボールを奪い、最終的に左SB佐藤響からのクロスで攻撃を終える。鳥栖はCKから再開を急いだだめ選手配置が遅れて、まともにプレスを受けてしまっていた。その後しばらくは京都プレスの優位が続く。鳥栖はボランチが移動することで、プレス回避を模索していたが、プレスを嫌ってロングボールを蹴る事に。ただ、ロングボールの行き先が必ず京都SBになっていたのが、後の伏線でもあったのだが。

流れをつかんだ京都の最初の決定機は8分。なんでも無いようなクリアボールを山崎が上手く落とし、一美のポストプレーが豊川が抜け出す。スライディングを交わしたまでは完璧であったがシュートは守備に阻まれる。前節得点を挙げた豊川は変わらず好調のようだ。

11:50あたり、鳥栖がハイプレス回避に初めて成功する。

ここまでSBがボールを持った時点で守備側IHに寄せられてボールの行き場所を失っていた。その解決策として、ボランチが守備側IHの裏に移動することで、回避に成功させていた。またこのスペースを使うために、SHが高い位置を取ることで、守備側SBを牽制している。この段階では相手陣への侵入まではたどり着かなかったが、非常に早い段階で解決策を見つけられた事は鳥栖にとっては大きかった事だろう。もう一つ、鳥栖の狙いが見えたのは守備から攻撃への切り替え。ボールを奪ったらすぐさま京都DFラインの裏に蹴り込んでくる。前線の裏に走り出すの反応の早さといい、これは決まりごととして用意していたのだろう。ただ京都守備陣としては裏を狙われるのは折込済みであり、十分な対応を見せ、さほど問題では無いようだった。

 ショートパスによるビルドアップへのチャレンジを見せるのが最近の京都である。18分あたり、GKからつないだボールに対して鳥栖も積極的にプレスを掛けてくるが、IHが落ちる事で上手く逃げ場所を作り、前進に成功する。ルヴァンカップを実験としていた成果が見えた場面だろうか。

 お互いに攻撃が優位になり始めた頃、試合が動かしたのは京都。GKのスローインから、豊川と松田のフリーランによって時間をもらった白井が大きくサイドチェンジ。同じく高い位置を取った左SB佐藤響のクロスから、大外の豊川がDFをかわしてシュートを決めた。アシストとなった佐藤響。彼の特徴としては、両足で精度の高いクロスを上げられる事。そのためインスイング、アウトスイングと軌道の異なる二種類のクロス対応を相手守備陣に迫ることができる。試合を重ねて特徴がチームにも浸透してきたのだろう、シーズン序盤ではドリブル突破を狙って止められる場面が多かったが、直近の試合では、周囲の選手が彼にクロスを上げさせようとしている。左サイドのクロッサーとして、スタメンに定着しつつあるのも納得できる。

先制点を取った京都であったがここで落とし穴。すぐさま鳥栖に同点に追いつかれる。

キックオフからそのままゴールへの繋がってしまったのだが、キックオフ直後の京都の振る舞いは迂闊だったと言えるだろう。複数の選手がボールになんとなく寄せてしまったため、全体が間延びしてしまった。特にボランチをフリーにしてしまったのが痛かった。サイドに送られたロングボールが中央に折り返され、フリーでボールを持たれ、あれよあれよという間に失点してしまった。

矢印を前に向けたプレーは京都のスタイルであるし、メンタルを支える重要な部分ではある。しかし、得点直後に不用意に前に出てしまい、ピンチを迎える場面はこれまでもあり、この失点が事故である、と言えるかどうかは議論のしどころであるかも知れない。

京都は変わらずプレスに行き、高い位置で奪ってからの攻撃を仕掛けるが、暑さもあってか、勢いに陰りが見え始める。徐々に鳥栖がボールを持ち、押し込む時間が増えていく。31分、鳥栖のコーナーキックはオウンゴールを誘い、逆転に成功。京都としては、過程も結果もダメージの大きい失点になってしまった。40分にはロングスローから裏を取られて3点目。シュートを決めた本田に、まったくついて行けなかった福岡の姿は切なかった。攻撃に厚みを持たせるため、懸命にエリア内への侵入を繰り返してたのが仇となったのだろうか。

後半、リードされている京都が退場者を出てしまったため試合詳細は割愛する。ただ、10人になっても失点を許さず、PKでの得点を取るまで持ち直した選手達は立派だった。それだけに前半得点直後の振る舞いが残念だったとも言えるのだが。

 

ひとりごと

鳥栖がしっかり京都を研究していたなと言うのが大雑把な感想になる。得点直後や自陣に押し込まれたときの守備、サイドバックの高さ不足など、問題にはなっていないけれど気になる箇所を突いてきた事は素直に関心した。今の時期、自チームを重視するため、こういう仕掛けを打ってくるチームはあまり多くない。とはいえ、選手個々でみると、これまでに比べると一周り落ちているのは感じられる。今年は残留を目指すシーズンにはなりそう。

京都側で気になるのは前半のうちから強度が落ちていた事だろうか。確かに点の取られ方がショックだったのだけれども。ここで振り返って置きたいのが昨年の成績。リーグ戦での8勝のうち、4勝を4月までに挙げた事だ。ハイプレスハイトランジションのサッカーを志向するゆえに、気温が上がってくるとそれだけで体力的なリスクを抱えることになる。それは明らかな課題であって、その解決が今年の大きなテーマなのだと考えている。3トップがターンオーバー気味の起用であったり、ルヴァンカップを使ってのポゼッションへの取り組みなどがそう。去年、今年という話ではなく、京都が次のステージへと登るための必要な過程ではないかと思う。その道筋が見えることを祈りつつ、見守っていきたい。