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2023年 J1 第30節 京都サンガ VS 湘南ベルマーレ ~課題への向き合い方~

京都にとっては勝てばJ1残留の確定する大事な試合となった湘南戦。試合間隔が3週空くという珍しい日程となったが、一方で試合に向けての課題がはっきりとしていた。

京都が解決しなければいけない課題は2つ。

 ・湘南の3142に対して、京都の4123をどう噛み合わせるか

 ・右CBに左利きの選手が入ることによる不利

ただし、京都が出した解決策は「試合になってから考える」というものだった。いや、実際は方針を立てて試合に臨んでいたのかも知れない。けれども、ピッチ上で起こる現象を見ているとそう考えるのは難しい。

 

 

中盤のかみ合わせ問題

3142と4123、単純に当てはめると図のような位置関係になる。

京都のSBと湘南のWB、サイドの選手のスタート位置が離れているが、マークすべき相手は決まっているので特に言及することはなし、しいて言えばフリーでボールを持ちやすいくらいか。実際の問題は中盤3人の形。京都は金子、湘南は茨田。DFラインの前に位置する選手であり、ボール循環の要のなるポジション。この選手をどうやってマークすべきなのかは思案のしどころ。

 湘南が取った策は、2トップの一人が常にアンカーを見張ること。CBをフリーにさせる可能性はあるが、重要地点へのボール供給だけは阻止する狙い。これは後述の右CB左利き問題にも絡めた策でもある。

一方の京都はというと、これがいまいちよく分からなかった。CF山崎が茨田へのコースを切ることもあるし、左IHの武田が主に出ていくこともある。右IHに入った川崎はマッチアップする山田を気にしてか後ろに下がり気味で、金子とダブルボランチの様な格好になっていた。左上がりの様になり、そのままプレスを掛けようとすると中盤三人は旋回するように動かねばならず、バランスが崩れがちになる、崩れた場合に3トップがカバーに入るかどうかもはっきりしていない。肝心の茨田へのマークが誰がするというようにも見えなかった。その時に近くにいる選手がマークにつくという約束事なのかもしれないが・・・

 誰がどのタイミングで誰に付くか。残念ながらそこを曖昧にしたまま試合をしていたように見える。失点シーンは、三竿がエリア内で足を引っ掛けてしまったのが直接の原因ではあるが、湘南右IHの池田をフリーにしたのが間接的な原因になる。フリーにさせた原因は中盤のマッチアップを曖昧にしたまま試合を進めていた事になるだろう。

 

右CB左利き問題

右利きのCBが出場停止、怪我となり、左利きのCBしか居ないという珍しい状況になった京都。左利きを右CBのに置くことにより、多くのデメリットが考えられる。詳しい事は前回の記事で書いたので見てほしい。

www.tomex-football.net

湘南はこの状況を活かすべく、きっちりと策を用意していた。金子をマークするためにCBにフリーでボールをもたせることを許容する。ただし、そのボールを持たせる選手をイヨハに設定していた。2トップの一人がアンカーの金子、もう一人が麻田を見ることで、あえてイヨハをフリーにして、ボールを誘導していた。イヨハがボールを持った時点でプレスを仕掛け、左利きゆえに展開の難しさを利用してボールを回収する。この守備方針は試合中に一貫して行われ、京都の攻撃を機能不全にさせ、試合の主導権を握ることに成功していた。策は見事にハマっていたのだ。

 京都が湘南の策に対して、何も対応していなかったというとそうではない。手を変え品を変え、対応しようと奮闘していた。

 ・イヨハが右足で縦パスを狙う。

 ・左SBの三竿を高くあげ、麻田、イヨハ、福田の擬似的な3バックに変化させる。

 ・金子がCB間に落ちて3バックに変化。

 ・右IHの川崎が右SBの位置まで下がってビルドアップの補助

 ・左ウイングの原が右サイドまで出張して数的優位を作る。

これらの動きを見てしまうと、事前に対策を決めて居なかったんだろうなと感じてしまう。中には上手くボールを前進できる事もあったが、その成功パターンを繰り返すことはせず、また別のやり方を試している状態だった。前半のうちはまだ良い方で、後半になるとポジション変化による工夫も見えず。イヨハ→福田のパスが出ると、もうそこで攻撃が終わり事が見えてしまうようになったのだ。

残り10分からは、パトリックを入れることが単純なロングボールからの攻撃になったのだが、ではそれまでなぜビルドアップにこだわっていたのかになる。これは橋本解説インが説明していたが、フリーでボールを持たせてくれる以上、なんとかボールを繋いで自分たちの時間を作りたいという気持ちがあるからなのだろう。もう一つ、ロングボールの受けてとなる山崎が湘南ディフェンスラインの抵抗にあい、いまいちターゲットとしての役割を果たせていなかった事もあるように思う。ただ、京都のビルドアップは、色々とやったにも関わらず、上手く行かなかったという結果だけは変わらない。

 

中断明けの一叩き?

戦術的な面の不備を書いたが、湘南戦はそれ以前だったようにも思える。ハイボールを競り勝てない前線、こぼれ球争いやプレスに後手を踏む中盤、相手FWを抑えきれない守備ライン、と良いところを見つけるのが難しい試合だった。

・開幕戦、VS鹿島

・和歌山キャンプ後、VS柏

・3週のブランク、VS湘南

上記の3試合を振り返っていただくとわかるのだが、試合間隔が空いた場合、低調な試合で負けるというのがもはや京都のパターンとなってしまっている。どうしてそんな事が起こるのか?と不思議で仕方ないのだが、ビルドアップの試行錯誤を踏まえて、一つの仮説を立ててみる。京都の選手たちは、試合をすることで対応策を見出し次に活かしてく、理屈ではなく経験が元にしているため、試合から離れてしまうと、身につけた対策が失われてしまい、手探り状態に戻ってしまうのではないか。そういう風な解釈でもしないと、休養を取ったはずなのにフィジカル面で遅れを取ってしまうのが辻褄が合わない。城陽での練習は一体どうなっているんだろう?と疑問を持たれても仕方ないのでは無いかと思う。

 度々出てくる話なのだが、曺監督の指導方針として、選手に判断させるというものがある。その指導方針には一定の理解ができるのだか、人の入れ替えや試合間隔が空く度に、内容に乏しい捨て試合を作ってしまうのは問題なのではなかろうか。もうJリーグもその様な悠長な構えが出来るレベルではなくなって来ているように感じるのが正直なところだ。