Take it easy

サッカーブログです。

EURO2024 グループリーグ第1戦 ベルギー VS スロバキア ~歴史を作るのは自分たちの手で ~

始まりましたスロバキア第一戦目。お相手はグループでは頭一つ抜けていると思われるベルギー。スタメンを見てもデ・ブライネを始め、ドク、ルカク、トロサールなどなど5大リーグ所属の有名選手がずらりとならぶ。果たしてワイの担当となったスロバキアはどんな試合をくりひろげるのだろうか。

 

怒涛の3分

 前半キックオフはスロバキア。キックオフのフォーメーションは2-1-7。前線にずらっと並んだ7人がそのまま前進するかと思いきや、二人は戻ってワンツー。これはマドリーがやってたキックオフセットプレーか!?と思いきや。後ろでボールを回し始めるスロバキア。やるんかい!やらんのかい!とは思ったが、準備はしてますよと言わんばかりのこの感じ、嫌いではない。その間、ベルギーイレブンは全く無反応だった。

 とりあえずGK+2CB+アンカーの菱形で様子をみるスロバキアに対し、ベルギーは強めのプレッシャー。ルカク+トロサール+デ・ブライネの3枚でプレッシャーを掛け、スローインをゲットすることに成功。守備からペースを作りたいのだろうか。一方でスロバキアの守備は451の構え。方針としてはワントップのポジェーニクに頑張って2度3度とボールを追ってもらい、サイドに追い詰めた所で二列目から一人飛び出してボールを行き場を無くしていく。試合序盤は、高い位置までボールにプレスを掛けに行く両チーム。これはどちらもGKを加えたビルドアップをしているという裏返しでもあるけど。

 初めのチャンスはベルギー。右サイドでボールを受けたドクが、一人外し、二人外し、プレスバックに来た8番ドゥダまでも外し、エリア内にパス。これをデ・ブライネがつなぎ、ルカクにシュートという贅沢三昧なアタックであったがこれはGKドゥブラフカが良いポジショニングでなんとか防ぐ。能力の高さをまざまざと見せつけられ、まともにぶつかれば、とても敵わない相手であることを再確認するスロバキア。さあどうするスロバキア。

果敢に挑むもペースを掴めないスロバキア

 ピンチはあったものの、自分たちの形をまず取り戻そうとするスロバキア。ボール保持では両サイドバックを上げた235の形を取る。3の中央にいるロボツカが前後の人数調整役。それに対するベルギーは523気味、というよりはマンツーマンで対抗するというのがプランのようだ。一方でベルギーのビルドアップは424の形。ボランチ二人を中央に配置したいわゆるボックス型となるだろうか。中央にルカクとデ・ブライネ。両サイドはドクとトロサールが幅を取る。ベルギーがGKからパスをつないでいくため、高い位置からのプレスを敢行するスロバキア。けれども、サイドでの2対1の判断を誤った所から順番に外されていき、4:50、ドクからルカクへのスルーパスという決定的な場面を作られる。ここもなんとかGKドゥブラフカが防ぐ。5分までに2度の決定機と力量を見せつけられてるようだ。ドゥブラフカの好セーブでなんとか試合の体を保っている状態だが、まだ5分だ。大丈夫かスロバキア。がんばれスロバキア。

幸運か必然か

 前触れの様なものは確かにあった。ベルギー自陣深い位置からのスローイン。なんでもない場面で、ベルギー痛恨のパスミス。見事な連携から一度は防がれるも、押し込んだのは右WGで出場のシュランツ。スラビア・プラハ所属の選手の一振りによって、誰も予想していなかったスロバキアの先制点が6:00に生まれた。この場面、パスミスをしたのは試合開始からドリブル突破、スルーパスでチャンスを演出したドクであった。開始早々に決定的なシーンを連続で作っていただけに、こりゃ行けるだろう、と慢心があったのは否定できないだろう。こういった大舞台で油断していい相手は一つもないことが、見ている者にも伝わったのではないだろうか。

 

調整方法の模索

 リードしたとはいえ、まだ始まって15分程。試合の様相はすぐには変わらない。スロバキアにとって、この時点での課題は2点。守備面では、ベルギーの2列目にいい形でボールを渡してはならない。前向かれた時点で、止められない面々が揃っている。ここまで、上手くパスコースを遮断することができていない。これはデ・ブライネのポジショニングが上手いとも言えるが。攻撃面ではひとまずベルギーのマンツーマンハイプレスをどうにか引き剥がさないといけない。

 15分あたりから、ベルギー左SBカラスコが高い位置を取り始める。スロバキアの守備は451のスタートポジションから5の中の一人が前に出て442に変化する。この時両端が前に出る形になると、サイドへのパスコースはどうしても空きがちになるので、そこから突破口を作られている。守備が機能しているとは言いづらい。ゴール前で根性で跳ね返す場面が続く。

 相手のマンツーマンデフェンスに対しては、中盤の2-1が前後を入れ替わるようにして相手マークをずらし、ワントップに放り込みこぼれ球を狙う。何が何でもつなぐというよりは、リスク回避のロングボールを選択しているようだ。とはいえ、こちらもあまり良い手段とはなっていない。スロバキアの3トップにラフなロングボールを収めるまでは至らない。とはいえ、ゲームが流れている中で対応策を模索してるのはちょっと凄い。Jリーグとの差をこんな所に感じる。

 

続けるスロバキア 続かないベルギー 

 試合はこの展開が続くかと思われたが、様子が変わってきたのは20分あたり。ベルギーの選手達の強度があからさまに落ち始め、ポジションの取り直しもサボり始める。ビルドアップの型自体は変えていないのだけれど、両ボランチが効果的なポジションを取れているとは言いづらく。スロバキア守備の442の2の後ろに終始隠れているような状態だった。これではボールは前に進まず。サイドバックもボールを受けに下がってくるため、完全に前後分断の状態に陥ってしまった。特に、ウイングにボールが入ってもサイドバックとの連携を使えないのは痛恨だった。

 30分近くになると、すっかりスロバキアがボールを持てるようになり、ベルギーを相手陣に押し込めるようにもなってくる。ベルギーのマンツーマンの守備がめっきり強度が落ちたこともあり、スロバキアは悠々とボールを前進させられる。ビルドアップで目立つのはアンカーのロボツカ。小柄で運動量が多い選手ではあるが、何よりいい場所に移動するのがとても早い。スプリントでは無いんだけど、中間の早さを使ってボールを前進させるためのポジションを次々に取っていく。こぼれ球への反応も早いし、一家に一台ほしい豆タンクである。

 とはいえ、レイオフ、列移動を交えたビルドアップが上手いだけに、3トップのパワー不足が気になってくる。丁寧に裏抜けと落ちる動きのコンビネーションを繰り出すも、いま一歩決め手に欠ける。なんとかならんか。・・・ならんか。

 すっかり強度(というかやる気?)の落ちたベルギーではあるが、デ・ブライネにボールが入ると一本のパスで裏をとってチャンスにする。まだまだ一発の脅威は残している。しかし、気になるのはデ・ブライネがイライラを表に出しまくっているところだろう。しきりに手で指示を送っている。最終的にはCBまで落ちてきて、ボールをさばき初めたのはちょっとおもしろかった。シティと比べるとそりゃ物足りないだろうけど、我慢の限界といったところだろうか。

 39分。ベルギー左ボランチのオナナが怠慢な守備を見せたところで、裏に飛び出した ハラスリンのボレーシュートはGKがセーブ。クロスといい受けるまでのポジション取りといいお手本になるような一連の連携プレーでのフィニッシュだったが決まらないのは本当にもどかしい。最後にルカクがロングボール一発裏抜けが成功したかのように見えたがボールが足につかず。前半はこれで終了。

 序盤は圧倒的にベルギー。スロバキアが得点してからもペースはベルギー。そういった流れだけに、前半終盤になった時のスロバキアの盛り返し具合が驚きだった。ここからベルギーはどうやって巻き返すのか。スロバキアはこのまま持ちこたえられるのか。後半につづく。

 

前半が連続する後半開始

後半開始。どちらも選手交代はなかったが、ベルギーはトロサールとドグの入れ替えと多少のアレンジ。キックオフ直後は調子の良かったドクだったが、時間が立つに連れて、スロバキア右CBのシュクリニアルに、こいつ縦しか無いな?と見切られ気味だったのでやむ無しか。ベルギーは前半に比べると、つなぐというよりは直接前線にボールを当てていく変化を見せたが、スロバキアのコンパクトな守備が仕事をさせない。逆にスロバキアはクリアボールをCFボジェニークに当てて前進を図る。左サイドへとつないだボールに、左SBのハンツコがセオリー通りのハーフスペース裏抜け。空いたスペースに左ウイングのハラスリンがカットインからのシュート。教科書どおりのアタックから後半最初のシュートはスロバキアとなった。前半の良いイメージが続いているようだ。

場所交代が功を奏したか、ベルギーの左サイドは活性化。カラスコとドクのコンビネーションに加え、ルカクが左に流れることでポスト役としても働くようになった。ただ代わりに右に移ったトロサールが所在なげであった。彼はカットインシューターなので致し方なし。53分。スロバキアの自陣でのスローインは、ベルギーの中途半端な守備がかいくぐられ、ロボツカの持ち出しから陣地回復。そうなのである、ロボツカはドリブルでボールを運べる豆タンクなのである。

 

反撃の糸口を掴むベルギー

ここまで、リードされているベルギーから、逆転しようというモメンタムがいまいち感じられなかったが、風向きが変わったのは54分。ベルギーのゴールキックでは、スロバキアは積極的にハイプレスを仕掛ける。前線の力量を考えると、ゴールを取る手段としては最も可能性が高い策であると考えているようだった。しかし、自陣で背を向けたボールを受けたドクが無理やり反転してのドリブルをスロバキア守備陣は止められない。組織だった451なら対抗できるが、ハイプレスを掛けて1対1が散らばって存在する状況ではやはり分が悪い。スロバキアはリードしている状況でハイプレスを仕掛けるべきだったのかはちょっと気になった。

55分。デ・ブライネがボランチの位置まで落ちて組み立てを初めた所から得たコーナーキックをルカクが決めた、かと思われたがこれはオフサイドの判定。完全に崩された形でオフサイドは幸運だったと言うしか無い。

勝負どころと見たベルギーは選手交代。ボランチの18番マンガラを下げて、19番バカヨコを投入。トップ下にトロサールを移動させ、デ・ブライネはボランチで組み立て役。終始困っていたビルドアップを改善するとともに、いまいちだった右サイドトロサールを機能させるのが狙い。国際試合では、こういった選手の配置を変える仕掛けが本当に早い。様子見をしてる間に試合が終わってしまう厳しさも感じる。個人的には、ボランチの二人の内、より怪しかったオナナを残したのが気にかかる。

58分。デ・ブライネからルカクへの縦パス。インテル仕込みのポストプレーからトロサールがシュート、とおおよそ狙った形でシュートを放つベルギー。続けて60分、デ・ブライネが引き付けてからの、ドクがPA内で仕掛けと、シティでよく見たやつからチャンスを作る。61分にも、スロバキアCBのシュクリニアルのクリアミスをルカクがボレー。61分には左サイドのドクの仕掛けからバカヨコのシュートはライン上でなんとか防ぐスロバキア。試合は選手交代が功を奏したベルギーの押せ押せムード。デ・ブライネの縦パスを阻止できず、ハイプレスどころではないスロバキア。ここはもう根性で守るしか無い、がんばれスロバキア。

 

苦しい場面で仕事をするロボツカ

69分、スロバキアは選手交代。前線で一人我慢の守備を続けていたボジェニークから18番のストレレツに。得点を取ったハラスリンを7番ススロフに。前線を入れ替えて少しでも陣地回復を行いたい。

ここでスロバキアに流れを変えるプレーが。69:30、クリアボールからのラフなボールをロボツカが引き受けると、一人で中央を持ち運び陣地回復に成功。チームに勢いを取り戻す。71:40には自分の自陣でのパスミスを自分でなんとか奪い返す(これはこれでだめなんだけど)。ロボツカはプレーでチームを引っ張り、辛い場面でいい仕事をしてくれるマジで助かる豆タンクである。
ここでベルギーが選手交代。トップ下のトロサールを変えてボランチのティーレマンスに。デ・ブライネが再びトップ下に。デ・ブライネが低い地でボールをさばくことでリズムを作っていたので、この交代は良いのだろうか。とはいえ、時間を考えるとデ・ブライネのゴール前での仕事に掛けるというのも分かるが。

前半と同様に時間が経つに連れてグダっていくベルギー。全体に運動量も落ち、ポジションを取るのも遅くなっていく。前半からデ・ブライネが苛立ちを見せていたけど、よく見たら、他の選手同士も言い合ってる。ビルドアップでのポジション取りに不満だらけのようだ。よっぽどチーム内での関係が上手く行っていないのだろうか。こうなると、選手毎のモチベーションにも差があるように見えてしまう。

70分もすぎると、ほぼスロバキアがボールを持つ展開となる。スロバキアの選手達の戦術的インテンシティはよく鍛えられている。パスアンドコーを欠かさず、レイオフを多用し、前進するためのポジションを次々に取っていく。それゆえにボールもよく動くし、気持ちの良い攻撃が見られる。これでシュートが決まれば・・なのだが、これは言ってもしょうがない。スロバキアの出来ることをやるまでだ。

80分には右ウイングのシュランツが、20番シュリシュに交代。3トップはとにかく運動量で頑張るポジション。84分。ベルギーは最後の交代。ドク→オペンダ、カラスコ→ルケバキオ。3214の様な形で最後の望みを掛ける。

85分。左サイドを抜け出したオペンダからのクロスを、ルカクが合わせて同店ゴールかと思いきや、これもノーゴール。オペンダが抜け出す時に手でボールに触れてしまっていた。2度ネットを揺らすもいずれも認められなかった。大舞台での不運から逃れられないのだろうか・・・

試合はこのまま終了。スロバキアは強豪相手に今大会初めてのアップセットを演じることとなった。

 

ひとりごと

まさかスロバキアがベルギーに勝つとは思わなかったw

2度のゴール取り消しとあわやというシュートが何度もあっただけに、運が良かったと言えるだろう。ただ、幸運を呼び込む努力を続けていたチームなのは確か。劣勢になってもプレーが崩れなかったこと、全員の戦術理解と実行力の高さ、見ていて好感の持てるチームだった。イタリア人監督のカルツォーナは非常にいい仕事をしている。ベルギーに勝ったことでグループリーグ突破が一気に現実的なものになった。ルーマニア、ウクライナも侮れない相手ではあるが、このチームならどこが相手でもいい試合をしてくれそうな気がする。

一方のベルギー。とにかく気になったのがチームの和。ポジション取りの不満を示すのはともかく、前半後半ともに25分すぎると、一気にチームの動きが止まってしまうのが気になった。モチベーション的に難しいことを抱えているのだろうか。次戦はとにかく元気があるルーマニアだけに、そのまま勢いに飲まれてしまいそうな予感もあった。