◆南米勢との対決
ウルグアイはスアレスはいないけれどもカバーニを始めとした一線級のメンバーが揃いました。今年から始まったUEFAネーションズリーグのおかげで欧州とのマッチメークが不可能となっています。お互いに対戦相手に困る未来が予想されますが、ちょっとやそっとじゃ解決できるものではなく、対戦する機会も増えそうな予感する両国です。
◆ハーフスペースにしかれられた罠
今回は親善試合。相手を意識するよりは自分たちがどうするか?というテーマで試合をすることが多くなります。この試合の代表、というよりは森保さんは対策を用意していたように思います。
ウルグアイはビルドアップの型として、相手2トップの守備に対して4バックから3バックへの変更、つまりメキシコ式ボランチ落としの派生型を多用して、安定したボールの前進を狙っていました。
方法としては左ボランチのトレイラが、3バックの左CBに入る動きを多用していました。たまに流れでボランチの左右が入れ替わった時にはベンタンクールが代わりに落ちる動きをしていたので、チームとして決まった約束事になっていたのでしょう。
メキシコ式ボランチ落とし(サリーダ・ラボルピアーナ)は自然とハーフスペースからボール運びが開始され、4-4-2で守る側からすると非常にやっかいな型なのですが、森保さんはそれを逆手に取った守備を準備していたようです。
ハーフスペースは攻撃側にとって有効である場所とされています。日本の守備はあえてハーフスペースへと相手を誘導しているようでした。2トップは無理追いせずに中央へのパスコースを塞ぎ、ボールの出しどころを前方だけに限定させます。そして中盤の選手、ボールサイドのサイドハーフとボランチは中間ポジションを取り、ハーフスペース側に体を向けることでパスが出された瞬間に寄せられるようにしていました。大外の選手は空けることになるのですが、出されたとしてもさらに狭いスペースに押し込めるので、そこから先のリスクも少ないという寸法です。
ウルグアイがメキシコ式ボランチ落としを仕掛けた時に、日本の選手はポジションを崩してプレスを掛けるような様子もなく、スムーズに対応していたのが印象的でした。
森保監督はウルグアイと韓国との試合のスカウティングをして、策をねっていたのでしょうか。親善試合でここまでの仕掛けをするのは珍しい事では無いでしょうか。
◆ポリバレントな2列目
1点目のきっかけでもありますが、攻撃において特徴的な動きが見られました。
サイドハーフの中島は下がる動きを多用していました。相手2トップの脇、ハーフスペースの低い位置でボールを受け、攻撃の起点になろうとしていました。中島の動きに呼応してSBの長友が代わりに幅を取るために前に上がります。
ドリブルを武器としたサイドアタッカーがこのような動きをすると、あまり歓迎されることは無いでしょう。低い位置で受けたとしてドリブルで何人も抜いていくのが現実的では無いからです。
それでもどうして中島がこの動きをしていたかと言うと、隙間を通すパスの出すこともできるからです。ドリブルとパスの両方を選択肢を持っているために低い位置からでも十分に攻撃を組み立てることができていました。
結果として、中島、南野、堂安の3人が活躍した試合になりましたが、彼らは基本的にはボールを持ちたいプレイヤーと見ているのですが、間受けや裏抜けをすることもできるようです。サイドでも中央でもプレーできるはずです。
自分の得意なプレーしかできない、もしくはやりたがらないプレイヤーも多いのですが、その時にベストと思える選択を躊躇なくする若手選手がそろって出てきているのに新しい時代を感じましたね。
それとこれは単純に驚いたことなのですが、2列めの三人の動きが重なることが少なく、互いの動きを補完するように連携が取れていました。3人が同じチームで活動していたのはほとんど無いと思うのですが、どうしてコンビネーションができているのか気になっている所です・・・
◆トランジション主義
もう一つ攻撃面での特徴を上げておきましょう。
日本の攻撃は早さを重視していました。人数をかけたプレスでボールを奪うと、その周辺にいる選手数を生かして、細かいパスで相手のカウンタープレスを外し、奪った勢いそのままにゴールへと向かいます。なんとなくドイツ的なイメージのある攻撃方法です。
日本の選手もほとんどが欧州でプレーする選手となりますが、特に若手が欧州のトレンドを上手に取り入れて、自分のサッカー観をアップデートしている感じはありますね。特に攻撃の選手は皆、裏を狙う意識を当然のように持っていました。
サッカースタイルが変わった事で、割りを食っいた選手もいました。ボランチの柴崎です。
ロシアワールドカップではチームの中心として、ボールの受け渡しを繰り返し、相手を動かして隙を作り、ゲームをコントロールといったプレーで評価の高かった選手です。けれども今の縦に早いサッカーでは能力を発揮する場面が無いのです。
今回の柴崎の起用の意図がどういうものだったのかは、監督本人にしかわからないことなのですが、今後ボランチに起用される選手としては前述の守備方法を踏まえると、ボールを奪う能力が重視されて、彼の出番も減ってくるのではないか?と予想されます。
◆まとめ
ウルグアイに打ち勝った試合として、評価のできる試合でした。
最後に気になったところを挙げていきます。
・守備への切り替え
攻撃への切り替えと同じ発想で、ボールを失ったときにもすばやくカウンタープレスをかけます。その時の状況によらずボランチがボールに突っ込んでいき中央を捨ててしまうので、ボールを奪い返せなかった時には大きなキズとなります。3失点目がそうですね。
・高さに弱すぎる。
失点の原因にもなっていました。ウルグアイがファーサイドへの高いクロスを多用していた事から攻めどころと認識されていたのでしょう。実際、ほとんど相手に触られていたように思います。
高さに強いと言えるのは吉田、酒井、出てないけど冨安くらいになるのでしょうか。露骨にハイボールを放り込まれたり、コーナーキックを狙いに来られたら、かなり厳しい試合になりそうです。
・試合運びの単調さ
常にリードを取る展開ではありましたが、試合のテンポ、強度に変化がなかったことが気になっています。親善試合だからで済ましても良いのかもしれませんが、交代選手が二人、原口と青山というテスト色の少ない交代だった事から勝ちにこだわっていたのではないかと。ベルギー戦からまだ3ヶ月しかたっていません。