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2019年 J2リーグ 第3節 アビスパ福岡 VS 京都サンガFC ~バランスは移ろいやすく~

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◆京都の可変3バック

3試合目にして初めての3バックです。DFラインも闘莉王、本多、安藤、石櫃が初スタメンと、これまでのメンバーと大きく入れ替えわりました。CB宮城、上夷のコンディション不良が大きな理由なのですが、サイドからのクロスをメインにしていた福岡対策という意味で、跳ね返す強さを持つ闘莉王、本多が起用されたのでしょう。

 

守備の局面では5-4-1の形で引いて、ゴール前のスペースを消す狙いです。一方でボールを持った時に右CBの安藤が中盤の位置に上がり庄司を押し上げる可変システムとなっていました。

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おそらくは上図の様な4-3-3への変形を想定したようですが、これはあまりうまく行きませんでした。

 

 

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上図は前半6分の場面です。
 右CBの安藤が中盤に上がりボールを受けているのですが、全体の選手配置の形はバランスが悪く、右サイドへと展開するパスルートが無くなってしまいました。

どうしても左サイドによってしまうことでフィールドを広く使えず、相手のプレスに対してボールを前に蹴り出すしかない状況も出てきていました。

さらに福岡のトップ下の選手が前にでて2トップの様な形になっていたので、後方に残る本多、闘莉王が直接プレスを受けていました。オープンになるのが難しくなり、ビルドアップも困難なものになります。

やりたいことはわかるのですが、かなり複雑な動きをしていまし、この可変システムにあまり利点を感じませんでしたね。個人的に有りか無しかと問われれば無しです。

 可変システムは相手の守備の目標をずらせるという利点もありますが、ポジションを変えるために時間がかかるという欠点もあります。幸いにもこの試合では起きませんでしたが、右CBが上がることで出来たスペースを狙われる事も考えられます。

 

結局の所、用意していた3バックからの可変システムは機能せず、開始早々に諦める事になります。

 

 ◆ボール保持のバランスを探す前半

前半の京都は攻撃時の適切なバランスを探すために苦心していました。

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前半16分あたりから、京都は安藤が中盤に上がる変形アンカーシステムを諦めて、3バックはそのままに庄司をアンカーとして置く形に変更します。後ろに3人を残すことによって福岡の2トップのプレスをかわせるようになり、慌ててボールを手放してしまう状況は避けられるようになりました。

 

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上図は前半25分あたりの状況です。

 後方でのボール保持がひとまず安定したのですが、ボールを前進するのにはまだ難しい状態が続きます。3バックの前に黒木、庄司、石櫃の3人が並ぶことになります。こうして後方に人数が割かれることで、ボールを前に運ぶにしてはいかにも重たく感じます。

この図の場面では、前線の人数を補おうと右SBの石櫃がポジションを高めに取ろうとしているのですが、先に右ウイングの中野が幅を取っているので、行き場所がなくなり渋滞を起こしていました。左右CBがボールを持ち上がっても、その先には二人選手が重なりパスコースが限定されてボールロストを繰り返します。そして突如として自由を与えられた重廣はどこにポジションを取れば決めかねて、宮吉の周りをさまようことになっていました。

 

状況が今ひとつ改善に向かわないなか、再びベンチが動きます。

30分あたり。重廣がファールを受けて試合が止まった時にポジションニングの指示が出されます。

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修正案はサイドの選手の位置関係をはっきりさせることでした。

右サイドでは石櫃が内側のポジションを取り、庄司と二人で中盤を作ります。そして中野が外に開いて横幅を作ります。左サイドは黒木が幅をとり、小屋松が内に入ります。サイドの選手の内と外の位置関係を決めることで、ビルドアップが改善されました。

 最初のプランが崩れてから、修正を重ねてなんとか攻撃のバランスを見つけられました。後半もこの形で試合を進めることになります。

 

◆この試合をどのように評価するのか

前半の内に修正を繰り返して攻撃のバランスを何とか形にすることはできたのですが、これまでの2試合に比べるとボール支配率は低く、決して狙いどおりの試合でなかったのは確かです。

監督のコメントを引用します。

--5バックに布陣を変えたが、福岡の長所を消してワンチャンスをモノにする試合運びはプランどおりだった?
福岡さんのストロングを出させないというのは狙いとしてありました。ただ、ワンチャンスをモノにするというのはプランどおりではなかったです。もうちょっと攻撃の時間とかチャンスを作ることができるであろう、作りたいと思っていました。そこはビルドアップ、組み立てのところで、これまでのシステムと違うところで選手たちが少し困惑したというか……。明確な場所で(ボールを)受けることができなかったというのは、少し課題ではあります。

福岡vs京都の試合結果・データ(明治安田生命J2リーグ:2019年3月9日):Jリーグ.jp

 試合後のインタビューでも「3バック・・・・ハマってましたか?」と答えていたように、守備は良かったものの攻撃面では課題を残していたと監督も考えているようです。

自分の感想も同じです。3バックにして強さを持つCBを並べたことで良い守備ができていた。その一方でボール保持のプランは最初に崩れてしまい、その後なんとかバランスを取ったものの選手のタスクと特徴が合って居ない所が出てきしまい、得点は取れたものの攻撃面では低調であったように思います。

 

宮城と上夷がスタメンで出た時は攻撃の良い起点となっていましたが、守備に甘い所があった。

本多と闘莉王では強さを出せたものの、攻撃の起点としては少々物足りない。

今後チーム全体の攻守のバランスをどう取っていくのかが、安定した勝ち点を取れるチームになれるかどうかの分岐点になるのではないでしょうか。

 

 

◆ゴールへのトリガー

得点シーンについても触れておきます。宮吉と黒木の見事なワン・ツーによりゴールが生まれました。この場面から少しさかのぼってみると、意外な選手がきっかけを作っていました。アンカーの位置にいた庄司が最前線まで駆け上がり、ロングボールのターゲットとなりました。これによりこぼれ球が生まれ、五分五分のボールを奪い取りゴールへとつながっていきます。

試合を通して庄司が最前線まで上がったのはこれ一回のみで、地味ながら勝負をかけた1手と言えるのかもしれません。この時に福岡側から見た右サイドの選手はスローインの守備をするため、前に出てバランスを崩した状態でした。もちろん庄司はゴールまでの画は描けてはいなかったと思いますが、相手の守備のスキを突くことでチャンスを作る計算があったのでは無いでしょうか。

この試合、京都はあまりチャンスを作れていませんでしたが、チャンスの場面になるといずれもサポートに走る選手の数が多く、ゴール前に人数をかけることが出来ています。FKをすばやく始めようとしたり、得点の場面の様に相手のちょっとしたスキを狙う動きもあります。

どのような状況がチャンスであるのか。どこに狙うべきスペースがあるのか。いつ前に飛び出していくのか。

ここまで3試合、選手達が相手をよく見て戦術的な思考を働かせている事にとても驚いています。さらにその思考が全選手に共有化されています。京都の選手が変わったのは頭の中ですね。ほんとに素晴らしいと思います。

 

 

 

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