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J1リーグ 第27節 清水エスパルス VS 京都サンガ レビュー

 

6ポイントマッチ

ホーム清水は442。不動の左SB山原に代わり片山。ボランチには久しぶりのスタメンとなったホナウドが入った。シーズン途中からブラジル人のゼ・リカルド監督が就任し、積極的な選手補強が実を結びつつある。

一方のアウェイ京都。台風とACLによる試合順延のため、3週間ぶりの試合となる。クラスター発生の影響はまだ続いているのだろうか。ウタカの名前はなく、山崎がワントップに入る。左ウイングには来季内定が決まっている関西学院の木村。3バック、4バックのどちらでも可能なメンバー選考となっており、試合途中でのシステム変更も視野に入れていると思われる。

 

3週間の影響

前半のキックオフ。4123の形を取った京都は前線の山崎をターゲットに、ロングボールを当ててこぼれ球を拾うことで前進を図る。一方の清水は京都のプレスを避けるように、GKを使いながらもロングボールをサンタナに当ててチャンスを作る。二列目の選手が京都の高いDFラインの裏を狙う意識も高く、この試合の最初のビッグチャンスは、右サイドのピカチュウが裏を取り、クロスを逆サイドの乾が狙う形だった。序盤は清水がペースを握る展開となったが、これは京都の方に原因があるように見えた。3週間の試合間隔、これは京都にとっては思いがけない休養期間となったが、それ以上に試合感覚を失った方が大きかった様だ。この試合ではプレスの連動不足や対人で遅れを取ってしまうことになる。清水の前線4人のクオリティは高く、右サイドのピカチュウを加えたブラジルトリオの即興連携は京都守備に脅威を与えていくことになる。

 

狭さで勝負する京都 広さを生かしたい清水

序盤のペースの握り合いがいったん落ち着き、京都がボールを持てるようになった20分。京都は片側に人数を集め始める左IH武田が右サイドまで移動し、左ウイングの木村が中央に絞るといった極端に人を掛ける。狙っていたのは右サイド。狭い空間で数的優位を生かしながら、度々奥深くまで前進しクロスを上げる事に成功していた。また、スローインから密集を抜け出した右IH福岡が左サイドまでボールを展開し、自らゴール前でクロスに合わせてネットを揺らす。が、これはOFRの結果ノーゴール。ノーゴールではあったが、一連の局面打開からフィニッシュまで素晴らしいプレーは、今季の成長を感じさせるものだった。

対する清水。京都ボールを積極的に奪いに行くというよりは、スペースを埋めて罠に掛ける守備を志向していた。体力のロスを防ぎたいというのもありそうであるし、京都の片寄せの攻撃方法から、ボールを奪えれば即大きなチャンスにつながる計算もあっただろうか。清水の攻撃はサイドチェンジを挟んでからカウンターがメインになっていく。

飲水タイムを挟んでも、試合を大勢は変わらず。右サイドの片寄攻撃が成功すれば京都のチャンス。それを咎めてサイドを変えれば清水のチャンスとなる。他に象徴的な場面となると、京都は前プレスの形として451から左IHの武田がでる442の形になることが多い。清水はGKを加えてビルドアップを丁寧にやりたいという姿勢は見せていたが、プレスに嵌められかけて結局は蹴っ飛ばす展開も多かった。京都としてはサンタナに直接当ててくる方が嫌だった気もするのだが、それでもこだわってやりたいというのが監督の姿勢なんだろう。決して上手くは行っていないのが、シーズン途中からの指揮であるのを感じさせる。

序盤は清水が優勢だったが、時間が経つにつれて京都が盛り返し、おおよそ互角とも言える前半戦となった。

 

勝負を決めるタレント

双方メンバーを変えずに後半戦開始。立ち上がりからエネルギー全開でゴールに迫る京都。前線からのプレスも積極的に仕掛け、なんどもボールを引っ掛ける。右サイドに人数掛ける攻めは変わらず、ワンタッチパスも交えながらチャンスを作り出す。清水の姿勢も基本的には変わらず。スペースを消す守備からボールを奪うと前線に当ててサイドチェンジ。クロスから得点を狙う。狭さの京都と広さの清水。

試合が動いたのは66分。清水右CBの立田からDFライン裏へのロングボール。左SBの片山が競ったボールを繋ぎ、乾の見事なコントロールショット。この場面だけを切り取ると、乾の類まれな技術によるゴールとなるのだが、清水はずっとその前フリを見せていた。

左SBに入った片山は典型的な使われる側の選手であるが、この試合では何度もオーバーラップを仕掛け、乾との連携で京都の右サイド守備に難しい対応を迫っていた。右サイドからのロングボールに合わせることもあった。左SBの選手を前線まで上げるというのは相当に思い切った使い方ではある。

京都はこの局面に対して何とか対応が出来ていたのだが、66分あたりになると運動量が落ち、中盤の選手がスプリント掛けて戻れなくなる状態に陥っていた。こういった状況もあり、片山は右SBの白井と競り合い外に開いた乾を完全にフリーにさせることに成功し、このゴールは生まれている。

いつもこの様な攻撃を仕掛けているのかは分からないが、少なくとも京都に対しては有効に作用し、また京都の運動量が落ちる時間帯までにしつこく続けた粘り強さも清水は持っていた。京都からすると、選手交代がもう少し早ければ・・というところだろうか。

失点した京都は反撃に出るべく、前線の選手を次々と投入するも、GK権田の牙城はついに崩せずタイムアップ。清水は残留争いから抜け出したとも言える勝利。京都は降格圏がすぐそこに見える痛い敗戦となった。

 

ひとりごと

この試合は権田、乾の代表クラスの選手が流石のプレーだった、という感想になっていまいがちな結果ではあるが、詳しく見返してみると、ゴールに到るまでの清水の戦略の巧みさを発見することになった。京都の戦術と弱点をしっかりと見極めた設計だったように思える。選手の連携ミスや習熟不足で上手くいかない気配がでていたけれど、それでも続けられた事が勝利の要因の一つか。まあこの順位の割に選手層が半端ないのが一番に来そうだけれど。

京都は6ポイントマッチを落とした痛い敗戦。3週間あいただけに上手くリスタートを切れればよかったのだけれども。夏補強の3選手が揃ってベンチ外、エースのウタカもベンチ外と、元から情報発信の少ないクラブではあるにせよ、一体何が起きているのか不安にさせるメンバー選考であったのは確か。後半になると運動量が落ちるという弱点を、明確に狙われ始めているのは痛い所。選手達の気持ちは切れておらず、サイドに人をよせて裏を取ってからのクロスをニアサイドに合わせる、という攻め手が見えたのは、少しの希望だろうか。