まえおき
この記事は、
普段からテレビやスタジアムでサッカーを見ていて、
選手達が何をやっているのか詳しくは分からない、
解説者の話している説明がいまいちしっくりこない、
今でも十分楽しいけれど、もっとサッカーの事を知りたい!
という方を対象にして書いています。
前編はこちらです。
後編は、「ラインコントロール」を中心に。
DFラインを上げたり下げたりすることで、選手たちは何を狙っているのでしょうか。
○ラインからラインまで
サッカーにはオフサイドというルールがあります。
DFラインとオフサイドラインは、ほぼ同じであると考えると
選手達がプレーできる範囲は味方のDFラインから相手のDFラインの間という事になります。
ピッチの広さに比べると選手がプレーできる場所は思ったよりもずっと狭い様です。
○ラインを上げると何で良いの?
「DFラインを上げて前後の距離を縮めることによって全体をコンパクトにできています。」
という風によく解説で言われています。
ここで「コンパクト」という言葉に触れると、これまた新しいテーマに出来そうなくらい長い説明になってしまいそうで
話が逸れていきそうなのでいったん置いておきます。(そのうち書きたいテーマです)
先ほどの図よりもDFラインを上げてみました。
選手はDFラインからDFラインの間に居るという原則が有るので
守備側がDFラインを上げると攻撃側の使える場所はどんどん狭くなって行きます
攻撃側の視点でみると、オフサイドの位置に追いやられた選手を使うことはできません。
有効な場所にいる味方であっても、守備側の選手が近くに居ることになりパスをだすのは難しくなります。
DFラインを上げることによって、ゴールから遠い位置の比較的安全な位置で守備を行うことができます。
また、自陣のゴールから遠いとは相手ゴールからは近い事でもあります。
高い位置でボールを上手く奪い取ることができれば、相手陣に攻めこむ時間を短縮できるでしょう。
逆にラインを上げないとどうなるでしょうか。
ラインを上げた時の図に比べるとすっきりしていますね。
このようにDFラインが上がっていないと攻撃側の使える場所が増えます。
パスコースが増えたり、ボールを受けて前を向く時間ができたり、ドリブルで加速する場所が出来たり・・・
まとめると、DFラインを上げる目的は攻撃側の使える場所を狭くする。
ということになります。
説明し忘れていましたが、「ラインを上げる」というのは守備側の動きを表す言葉です。
攻撃側に対して使うことはありません。
○上げすぎ注意
残念ながらラインを上げることは良いことばかりではありません。
当然ですがラインを高くするとDFラインの後ろのスペースは広がります。
守備側の選手が居ない場所が増えるという事です。
DFラインの裏に飛び出す選手に向けて、オフサイドにならないタイミングで出されるパス。
いわゆる「DFラインの裏を狙うパス」に対して構造的な弱さを持っています。
裏を取られた場合、待っているのはGKとの一対一。失点の可能性は極めて高い。
DFラインを上げることは、攻撃側の自由を減らし守備を優位に進められる一方で、
一つのプレーであっさり失点してしまう危険も同時に抱えています。
○裏を取られたくない!!!
DFラインを上げたいけれど裏を取られたくない。
この矛盾した問題を解決する方法は有るのでしょうか。
1,足の速いDFを使う
裏に出されたパスに対して行われるの競争に勝ってしまおうという発想です。
攻撃側の選手よりも足の速いDFが居ると、裏に出されるパスに対する保険となり、
安心してDFラインを上げることが出来ます。
2,守備範囲の広いGKを使う、
DFの代わりにGKに対処を任せてしまう方法です。
ただこの方法はGKに求められる能力が多く、
裏に出すパスを予測する、ボールを足を使って正しく扱うことができる、
ボールに素早く近づく瞬発力、そして前に飛び出す勇気。
これだけの能力を持っているGKはなかなか居るもんじゃないです。
もしこの方法をとっているチームがあるなら、それはGKに対して極めて高い信頼があるのでしょう。
3,そもそもDFラインを上げない。
身も蓋もない話になりますが、裏を取られたく無いのならDFラインを上げない事です。
足の速いDFもいない、前に飛び出せるGKもいない。
裏を取られる位ならDFラインを上げるのを諦めるわ!!…という方法です。
DFラインを下げる事で、相手側に自由に使える場所を与える代わりに
一番危険なDFラインの裏を減らすことが出来ます。
3つ方法を上げてみましたが(他にもあるかも)
DFラインに関してはどのチームもジレンマを抱えているものです。
それぞれのチームがどんな考え方でDFラインの場所を決めているのか?
その理由を探してみるのも良いのでは無いでしょうか。
○上下のタイミング
DFラインは試合中に何度も上下動を繰り返しています。
この上下動はある一定のルールにしたがっています。
まずはDFラインを上げる時。
厳しい守備を受けてボールを持った選手が後ろを向く。
おそらくこの状況では攻撃側は前にボールを進めることが出来ないでしょう。
この瞬間がDFラインを上げるタイミングです。
ボールを後ろにさげなくてはいけない、FWはオフサイドにならない場所に戻らなくてはいけない。
攻めているはずの攻撃側としては散々な状況です。
DFラインを良いタイミングで上げることが出来ていれば、
攻撃側全体を自分たちの守るべきゴールから遠ざけることが出来るのです。
ではDFラインを下げる時はどんな状況でしょう。
DFラインを上げる時と逆の状況ですね。
ボール保持者が前を向き自由にパスを出せる状況では、DFラインは一斉に下がらなくてはいけません。
下がる距離もポイントです。FWよりもある程度ゴールに近い位置を取る必要があります。
DFラインの裏に出されるパスに対抗できるようにするためです。
DFラインが下がらずにFWと横並びの様な場所を取ってしまうと、
体の向きの関係上、競争に負けてしまいます。
反転する時間を稼ぐために、FWよりは少し後ろの位置まで下がります。
○上げたくても上げられない。
チームの方針としてDFラインを上げて守備をやりたい。
頭ではそうは思っていても、必ずその通りに出きるとは限りません。
攻撃側のボール回しの技術が守備を完全に上回っていると、守備側の陣地であってもボールを奪い取れない事があります。
ボールよりも後ろ、自分のゴールに近い場所でないと守備にはなりません。
失点を防ぐためにMFは下がらざるを得ず、同じようにDFのラインも下がってしまいます。
DFラインを上げて試合を優位に進めたいと考えているチームにとってはかなり不利な状況です。
これが想定内の出来事なのか、それとも単純に作戦ミスなのか、どちらにせよ対応策が求められます。
DFラインの裏をしつこく狙われて、DFのラインを下げてしまう場合もあります。
非常に単純な方法ですが、守備側から見ると嫌な攻撃です。
もし万が一裏を取られる事があれば失点の可能性は高くなる。
しつこく狙ってくるのなら、DFラインを下げておくほうが安全なのではないか?
という選手の心理が働きます。
そこでDFラインを下げてしまうと攻撃側の思う壺です。
最初に説明したとおり、攻撃側の使える場所が増え優位に進めることが出来るからです。
裏を取られる怖さに耐えてDFラインを上げ続ける。
ラインコントロールを行う選手には、気持ちの強さも必要では無いでしょうか。
最後に、体力が無くなってしまう場合。
気温の高い日や過密日程で選手たちの消耗が激しい試合では、
試合終盤になるとDFラインを上げる体力すら残っていない事があります。
ほんの5メートル〜10メートル程なのに、と見ている方は思ってしまうものですが、
頭では解っているのに体がついていかないのです。選手達はそれ程に体力が残っていないということです。
お互いのゴール前を行ったり来たりする落ち着きのない試合になる時があります。
これはどちらのチームもDFラインを上げられない程に疲れきっているんですね。
○スタジアムで見るとよく分かる。
じゃあ実際に自分の眼でDFラインの動きを確かめてみるぞ!となる所なのですが、
これが少々難しい。
仕方ない事なのですが、ほとんどのテレビ中継ではDFラインの動きを見ることは出来ないでしょう。
テレビカメラはボールを中心に映します。DFラインの動きまで画面に収まらないのです。
・テレビ中継の見え方
実は画面の右側ではFWとDFが並走しています。見えない…
そこでスタジアム観戦がおすすめです。
・スタジアムでの見え方
これは先程のテレビ中継の画と、同じスタジアム、同じアングルで見た時の写真です。
遠くて選手を見づらいですが、代わりに全体を俯瞰で見ることができます。
どちらのDFラインの動きも視界に収まっていますね。
ここからはお願いなのですが、スタジアム観戦する機会があれば、
DFラインの動きをじっくりと見て欲しいのです。最初の15分だけで構いません。
試合開始からの15分、選手の体力も十分なので試合の主導権を握るために激しくラインの上下動を繰り返しているはずです。
どのタイミングでDFラインを上げるのか、誰が合図してコントロールしているのか、すぐにわかると思います。
ボールの無いところでも戦っているDFラインの選手達。
しっかり見てあげても良いですよね。
○終わりに
DFラインの基礎知識。いかがでしたでしょうか。
だいぶ突っ込んだ話になってしまい、わかりづらい表現になったのが少し反省です。
分かりにくかったり、これ間違ってない?という所があれば、教えてください。
できるだけ対応しようと思います。
皆様のサッカーを楽しむ手伝いが出来ますように。