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サッカーブログです。

カラコーレスをもう一度 ~シャビの回転とその探究~

きっかけとなったのは次のツイートである。

 

自分もこの表現を目にしたことはある。不思議に思ったのでちょっと調べてやるかみたいな軽い気持ちだったけど、結構な波に飲まれてしまった。調べているうちにトリビア的なのが見つかったのもあって、文章として残しておく。

 

 

カラコーレスが見つからない!

最初に前提としておきたいのがシャビのターン。

↓youtubeでご覧ください

El giro 360 de Xavi / Xavi 360 Flip.

シャビはバルセロナを体現していた選手で非常に高いスキルを持っていた。その中でも違いを見せていたのがターンの技術。とにかく回る。くるくる回る。ボールを守りながら方向転換をするというのは、フィジカルに恵まれていなかったシャビを支えていた技術でもあった。

先に上げたツイートは、そのターンに付けられている名前への疑問だ。

カラコーレスはスペイン語で”Caracoles”と綴り、"Caracole”の複数形となる。意味はカタツムリ。カタツムリが持つ殻の形状から、転じて「渦巻状の」という意味もあるそうだ。

www.hmv.co.jp

フランス料理でエスカルゴがあるように、欧州ではカタツムリはメジャーな食材。スペインでも同様で、"Caracoles"と検索すると、まず料理であったりお店の名前がヒットする。

さらに「xavi turn」、「xavi Caracoles」、「Caracoles fútbol」などで検索を進めたが一向にシャビを姿を表さない。どうも「Caracoles 」はスペインで一般的に使われているサッカー用語では無さそうなのだ。

 

さらに情報が集まる

さすがはTwitterと言ったところだろうか、たまにこうして情報が集まる事もある。

 

スペイン語を解する方々からのリプライ。もっとシンプルに「Giro」「girar」(turn、ターンする)という言葉で表現しているんじゃないか?という見解。シャビが指導をする動画の中でも"giro"と表現しているシーンもあるらしい。(これはソース見逃しです。すみません。)

ここでも 「Caracoles 」は出てこない。もしかすると、言い回しとしてはすでに廃れてしまったのかもしれない。

 

単語からのアプローチを試みる

 ”Caracoles”の単数形、"Caracole”の意味を調べてみるとこの様な記述があった

caracoleの意味 - goo辞書 英和和英

[名]
1《馬術》〈馬が〉半回転
2らせん階段
━━[動]自《馬術》半回転する

「馬術」で「半回転」というワードから、スペイン乗馬学校の演技を思い出した。 後ろ足を中心に馬がくるくる回る技。なんとなくシャビの動きに似てる。

www.youtube.com

youtu.be

ここから”Caracole”という言葉が来ているかと思ったがそれは思い違い。ピルエットという技名がちゃんとある。

ちなみにスペイン乗馬学校はオーストリアのウィーンにある。なんでやねんと言いたくなるが、スペイン原産の馬を使って馬術を始めたからだそうだ。ウィーンフィルの演奏に合わせた演技は非常に優雅。せっかくなので、これはこれで楽しんで頂きたい。

 

すっかり脱線してしまった。伝えたいのは”Caracole”。これは固有名詞として、騎兵の戦術を表す言葉だ。

カラコール - Wikipedia

16世紀から18世紀にかけてヨーロッパの騎兵が使用した戦術。敵前にギャロップで接近し、馬上で射撃をした後に半回転して後方へ下がる機動をいう。

カラコールとはスペイン語でカタツムリ、あるいは螺旋の意味である。敵前で半回転する独特の機動が、カタツムリの殻を思わせることからこのように呼ばれた。フランス語では同様にカタツムリを意味するリマソン(Limaçon)と呼ぶ。この戦術が普及したことから、カラコールは騎兵の半回転をあらわす用語となった。

 

youtu.be

馬の機動力を生かし素早く歩兵の軍団に近づき、銃を撃ち離脱する、この様な集団戦術が”Caracole”と呼ばれていた。

ちなみに有効な戦術であったかという、そうでもなかったらしい。騎兵が持つ銃は命中率も威力も乏しく、歩兵の集団に有効な打撃を与えられなかったからだ。

螺旋を描く、回転する、という意味では、シャビのターンと一致する。それでもスケール感として、もっと大きな動きを表現してそうな気がする。

 

ここまで来て疑問は2つ。

・シャビのターンに特別な名前は付いているのか?

・付いているなら、それは”Caracoles”と(一時期でも)呼ばれていたのか?

 

Xavi's signature move

灯台下暗しとはこのこと。英語版wikipediaのxaviのページにそのものずばりが記述されていた。

en.wikipedia.org

 Xavi's signature move when in possession involved him performing a 360 degree turn, a feint known as la pelopina, that allowed him to move away from the opposing player, retain possession, and gave him space and time on the ball to think about his next pass.

「シャビがボールを持った時にする特徴的な動きがある。"la pelopina"と呼ばれる360度ターンを使い、相手から離れボールをキープし、次のパスへとつなげるスペースと時間を作る。」

シャビのターンは "la pelopina"という名前だった。ラ・ペロピナとでも言うんだろうか。日本語圏で浸透しそうな気は全くしない。意味は「チップ」海外の習慣として戸惑いやつだ。どうしてこういう名前なのか、見当もつかない。

www.youtube.com

動画をみると、そうこれこれ!と言いたくなる。

同じスペイン人のダビド・シルバも得意としていた。こちらも”la pelopina”と表現されている。

www.youtube.com

 

シャビ本人はというと、自分が持つヨットに"la pelopina"と名付けている。気に入っとるんかい。

www.mundodeportivo.com

これはヨットをチャリティのためにオークションにかけたという記事。

 

(追記) 

”la pelopina”の由来について、情報を頂いたので追記。

www.reddit.com

海外のyahoo知恵袋みたいなサイトで似たような疑問が投げられていた。

Q:His Yacht's ame is La Pelopina? That's brilliant.

A:Xavi's nickname is Pelopo, so his yatch is the female name of Pelopo: Pelopina

And Pelopo comes from Pelo Polla (pubic hair), usual name for people with curly hair

 

A: 

What!? No. Xavi doesn't even have curly hair.

Pelopo was his nickname in the Barça dressing room after is love of hair gel. And La Pelopina is what they called his signature 360° turn.

 

Q「彼のヨットはなんで”La Pelopina"なの?かっこいい名前だけど」

A「シャビのニックネームが"Pelopo"。それの女性名詞が"Pelopina"。"Pelopo"は髪の特徴から。ふつうはカーリーヘアの人に付けられる。」

A「なんで?シャビはカーリーヘアをしたことがない。"Pelopo"は彼の好きなジェルからきてる。そして”La Pelopina"は彼の得意な360度ターンがそう呼ばれているよ。」

 

由来はともかく、シャビは”Pelopo"と愛称を付けられていたようだ。

こんな記事もあった。

「カシージャスにとってはシャビはまだまだ"Pelopo”」

sportsfinding.com

スペイン代表でずっと一緒に戦ってきたイケル・カシージャスが昔を懐かしんでいる。その中でミゲル・アンヘル・ナダル?(テニスのナダルの叔父さん)がシャビの事を"Pelope"と呼び始めた事を語っている。ちなみに”Pelope"の意味を調べてみると、チリチリ頭とか天パとか言うニュアンス。これは蔑称なんじゃないかとドキドキしてしまうんだが、そういう文化なんだろうと納得するしかない。

 

ともかくシャビのターン”La Pelopina"は、自身の愛称である"Pelope"から来ているのでは無いかと想像する。つまり自分の名前が技名になってるわけで、「シャビターン」みたいな感じじゃなかろうか。

(追記終わり)

 

なぜ日本ではカラコーレスと呼ばれたのか?

”Caracoles”の意味を復習すると、渦巻、旋回、回転と言った意味がある事は確か。だとするとシャビのターンを”Caracoles”(カラコーレス)と表現しても、特別おかしいようには思えない。

けれどもスペインで使われていない表現がどうして日本で使われているのかはやっぱり良くわからない。

過去のネットを調べてみると2004年にカラコーレスと表現している文章があった

[mixi]エル・クラシコ!大胆予想! - FCバルセロナ!! | mixiコミュニティ

Barca          
ぺセテロツブシ・ジオ     
ソロソロキメテ・マルケス   
ペセテロキライ・デコ     
カラコーレス・シャビ     
スペクタクル・ロニー     
アンチペレス・エトオ     

さらにライカールト時代のファンサイトでもカラコーレスの解説がされている。

www.oye-comova.com

 

というわけで、詳しい経緯を知っておられる方がおられましたら、よろしくおねがいします。