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書評 モダンサッカーの教科書Ⅲ ~進化するサッカーのその先は~

 シリーズ第三段

文章を書く事が少なくなってしまい、こりゃまずいとリハビリも兼ねて書評というものをやってみる。題材はタイトルの通り、モダンサッカーの教科書Ⅲである。

このシリーズ、第一弾が発売されたのはもう10年も前の話になるのだが、数あるサッカー本の中でも特に評判が良かったのを記憶している。現ボローニャのヘッドコーチであるレナート・バルディが惜しげもなく知識と見解を披露してくれているのだから、内容の濃さは折り紙付きだ。これは自分も当然影響を受けていて、試合・チーム分析を行う時には、彼の分析フレームワークをそのまま使わせてもらっている。試合を観察する時にはこうすればいい!とお手本を示してくれたのには大変感謝している。

 

タスクで選手を表現する

第三段のテーマは、ポジションからタスクへ、である。これまでのサッカーではポジション=選手の役割であるのが通例だった。CBはボールを跳ね返し、SBは上下動し、CFはシュートを決める。役割を背番号で表すなんて事も行われていて、背番号9はストライカーであり、背番号8はDFとFWをつなぐ選手という具合だ。

現在のサッカーでは戦術が複雑化、高度化し、選手への要求は非常に高いものになっている。複数の役目をこなすことが求められている。ちょっと古い言葉でいうポリバレントであるという事だ。そうなってくると、選手の表現するのにGK、DF、MF、FWと言った位置を示す用語では上手く説明できなくなってきている。だからその選手がチームの中でどんな役割(タスク)を担っているのかを、きちんと説明する必要があるのでは無いか?というのも本書の隠れテーマかもしれない。

トップオフトップの環境の中で、監督のぶっ飛んだ思想にも対応できる選手が出始めている。本書ではGKからFWまで各ポジション(こう表現するのも変かもしれないが)で解説されている。具体的な選手名も多く挙げられているので、欧州サッカーを追いかけている人ならば、イメージしやすく楽しんで読めると思う。もう高さで勝負するCFなんかどこも欲しがらないのでは?なんて刺激的な言葉も。

タスクを表現する言葉

ちょっと話を横道にそれる。選手のタスクを表す言葉をもっと作ろうじゃないか、という試みが欧州の一部でなされている。選手が担うタスクにもっと寄り添った名前にしようという事だ。

例えばアレクサンダーアーノルドはポジションで言うとDF,SBになる訳だが、実際のプレーを見るとその様なイメージは合わないだろう。そこでつけられた名称が「Offensive Wide Progressor」「wide active playmaker」などである。確かにDFよりはしっくり来るのでは無いだろうか。

この名称がそのまま極東にまで届くとは少々考えにくいのだけれど、この様な動きががあることは覚えておきたい。日本でも新しい呼び名が生まれるかもしれない。

 

まとめ

最新のサッカー情勢を、選手にフォーカスして説明するという形になっているおかげで、とても理解が進む内容になったのでは無いかと思います。

個人的には本書はとても楽しく読ませて頂きました。著者の片野道郎さん、そしてレナート・バルディさんの良い仕事にとても感謝していますし、このシリーズが長く続く事をお願いしい所です。