未だ引きずるCOVIT-19の脅威の中、今年も無事にJリーグが開幕した。制限があるとはいえ、観客を入れて試合ができるのは大変喜ばしいこと。その裏には各クラブ、運営に携わる方々、そしてしっかりルールを守るファンの皆さんの努力の上で成り立っていることを心にとどめておきたい。世の中は少しづつだけれど、良い方向に向かっている。がんばっていきましょう。
開幕戦の京都サンガはどうだった!?という前に、ちょっと踏まえておきたい話がある。サッカー戦術の大きな2つの流れについてだ。
2大派閥、スペイン系とドイツ系
サッカーはミスのスポーツと呼ばれる。手よりもずっと思い通りにいかない足を使い丸いボールをプレーする。思い通りに操るのも一苦労。さらに敵味方合わせて22人がピッチ入り乱れるため、複雑さは掛け算される。要するに、サッカーは制御不能な事象に溢れている。
そんなサッカーをどうやって攻略すれば良いのだろうか?この問に対して、生まれたのが前述した2つの派閥、スペイン系とドイツ系。思想と言っても良い。
これは自分が勝手に名前を付けたので、まったくメジャーな用語ではない。でも大まかにはあってると思う。
ミスとどう付き合うか
まずはスペイン系。こちらはサッカーにおけるミスを可能な限り少なくし、想定外な局面をできるだけ無くそうとする思想だ。
サッカーをコントロールするとでも言えば良いだろうか。自分達の想定どおりの攻撃をしかける。ボールを奪われる場所も想定した守備を行う。そのために基本的にはボールを持つ事を目指す。ボールを扱う技術を磨き、ポジションを工夫し、思い通りの時間を増やす。想定内の出来事しか起こさないようにする。そうすれば勝利に近づけるだろう、という考えだ。
一方でドイツ系はサッカーにおけるミスを受け入れる。ミスが起きることを前提に、イレギュラーな場面での振る舞いに強くなろうという思想。
競り合いの強さや瞬間的な判断なスピード、足技というよりはフィジカル的な能力が求められる。ゲームをコントロールすると言うよりは、あえて想定外な場面を生み出しに行ったりもする。そうしたイレギュラーは敵味方にとって平等なため、準備していたこちらの方が優位に立てる。そうすれは勝利に近づくのでは、という考え方。
一言で表すなら、スペイン系はサッカーに秩序を求め、ドイツ系はカオスを見いだす。
どうしてこういう話をしたのかと言うと、ここ最近の京都サンガとつながりがあるから。分類分けすると今年はドイツ系になる。スペイン系はというと、皆様の記憶もまだ新しい一三サッカーがそれにあたる。どちらの思想も長所短所はあり、優劣は付けられない。結局はその人のサッカー観に準じる所でもある。
開幕戦から見えたもの
なんとなく全体的にがちゃがちゃしてる。
こういう感想を持った方も多いのでは無いだろうか。これは前述したドイツ系の志向したチームの特徴だ。選手が密集して縦に速いのも、イレギュラーな場面が起こりやすくし、そこからのリアクションで優位に立とうとしているから。ピッチを広く使ってサイドチェンジをしたり、バックパスを多用してボールを長く持つという事もやらないはず。それではドイツ系の思想とは外れてしまうからだ。
密集の実現に対しても思い切った策が取られていた。基本システムは4-3-3表記であったが、攻撃時にはサイドバックが高い位置をとり、ウイングは中に入る。さらにインサイドハーフまでもが絡んでくる。後ろは2CBとアンカーのみ。
宮吉の左ウイングは、中に入りストライカーとしての役割を担って居たからだろう、逆に右ウイングの白井はサイドプレイヤーであるため、中に入っても思ったようなプレーができていなかった様に思える。そのためハーフタイムで左利きの中野に交代になったのだろう。
高い位置を取らせるだけあって、両サイドバックの攻撃力には目を見張るものがあった。飯田、荻原ともに1対1の可能性を感じられ、ニアゾーンをつく動きもトレーニングされているようだった。両サイドバックにこれだけの選手を揃えられているのは大きな強みだ。
ボールを奪った奪われたの場面での切り替えの速さは特に意識されていそうだった。松田天馬と福岡の中盤起用はそれを意図したものだろう。
ピーキーな調整
反対にちょっと気になる所を上げていこう。
後半15分~35分近くまで、かなり嫌な予感がする時間があった。中央で動きがなくなり、ただサイドからクロスをあげるだけになった時間帯だ。
ゴール前に人数を掛けるという方針から、選手の消耗が思ったよりも早く来てしまったのだろう。こうなるとかなり厳しい。中盤でゲームを作るタイプの選手が入ることは考えにくく、運動量が落ちるとそのまま攻撃力の低下につながってしまう。この試合ではセットプレーから点を取ることができたが、そこまでの停滞はいただけない。
中央に人が集まり、そこから攻撃の糸口を見つけ出そうとしていたが、あまり効果的でもなかったように思う。連携不足といえば簡単だけれど、いったん相手に引かれてしまうと、渋滞を抜け出すのはかなり難しい作業になるだろう。実際5バックで後ろに引く相模原の守備にかなりの時間粘られてしまった。カオスと無秩序は表裏一体だ。
攻撃に人数をかけるため、カウンター対策も気になる。この試合ではバイス、本多、川崎のみで対抗していた。これはかなり危うい印象があり、前半にはゴール前まで持っていかれる場面もあった。後半では川崎が素晴らしい出足で攻撃の芽を摘み取っていたが、この守り方はこの3人だからできるように思われる。CBの選手層は他に比べると薄く、同じような前掛かりを続けられるかはちょっと怪しい。
この試合では相模原は全体に引いた守備をしたので、後方からのビルドアップにそれほど苦労はしなかった。では逆に思いきり前からプレスを掛けられたらどうなるか。半分逃げるロングボールを蹴らされると、高さに掛ける選手の多い前線は遅れをとってしまいそう。それを逆手にとってこぼれ球争いに焦点をあてるのかもしれないけど。
あと、ピッチを5レーンに区切って練習してるのはどこに作用しているのかは気になる気になる。
まとめ
京都サンガサポ、ここ3年であらゆる種類のサッカー見せられて混乱してそう。
— とめ@はんなりサッカー (@tome_beta) 2021年2月28日
まずはビックリした。スタイルの変更ではなくリスクのとり方に。スタイルを示す意図があったのでは無いかと思うが、アピールに力が入りすぎてる雰囲気も感じられた。
京都が優勝候補に各所で挙げられているらしいが、それは他のチームとの相対評価で押し上げられたものでは無いかと踏んでいる。極端な事をやっているので、あっさり研究にやられそうな雰囲気もあり、わからん殺しを発動させる予感もあり。こまかい調整は試合を重ねる毎にやっていくんだろう。
極端なチームの変化は内外にどのような影響を与えるのだろうか。曲者ぞろいのJ2で一筋縄ではいかないのは確か。