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2023年 J1 第19節 鹿島アントラーズ VS 京都サンガ ~自信を持つことの価値~

Jリーグも折り返しを過ぎ、勝負の夏場へと入っていく。どちらのチームも一時期あった低迷期を脱して、これから上の順位を狙っていきたい所であるが、満足のいくスタメンを組めているとは言い難い。チーム全体としての力を試される1戦となった。鹿島は佐野海舟に変わってピトゥカがボランチに、FWには荒木が入り、大黒柱である鈴木の相方探しは続いている。京都は、代表帰りの川﨑は、アンカーではなくIH。アクシデントとも言えるが、不動のSB白井に移籍報道があり、福田がスタメンとなっている。

 

キックオフは鹿島。フォーメーション表記は442であったが、荒木と鈴木は縦関係とになっている。また、ボールを持った場合には左サイドの仲間が中央に入り、左SBの安西が高く上がる。最初にシュートチャンスを作ったのは、内から外に飛び出した仲間からのクロスであった。序盤にペースを握ったのは鹿島。前述の仲間の動きがキーとなっていたが、荒木、仲間がアンカー脇にポジションを取り、さらにかなり流動的に動くために、京都守備陣は基準点を決めかねているようだった。ただ8分には木下が裏を取ってコーナーキックを奪った様に、前線3人のカウンターで仕留めてしまえという反撃手段は用意されている。鹿島は中盤、前線が流動的ゆえに、守備陣形を整えるのに時間がかかる。その隙を狙っていこうというのだろう。

15分経過したところで、この両チームが似たような特徴があるのに気づく。注力している所、やりたいけれどしっくり言ってない所、結構似てる。どちらもプレッシング、奪われてからの切り替えは早く、攻撃もどちらかと言うと速攻を狙っている節がある。ただし、できるだけボールを持ちたいという意志はビルドアップに現れているが、相手のプレスをかわす段階までは達してなく、ロングボールを蹴ってしまう場面が多い。ただ、低い位置で奪われるくらいなら安全にボールを捨てるのも致し方なし、という方針も尊重されるべきであるかもしれない。18分、松田のバックパスのミスからコーナーキックになったように、どちらの守備も有効に機能しているぶん、こういうミスから得点が生まれそうな雰囲気である。

24分、鹿島に最初の決定機、ゴール前での細かい連携から仲間がシュートは太田がセーブ。左SHの仲間が右からカットインしている所に鹿島の流動性が示されている。シュートは打たれたものの、京都がここまでよく守れているという証拠でもある。開幕戦ではなすすべくやられた鈴木優磨に対して、守備陣がよく対応している。とはいえ、鹿島攻撃陣のキャラクターによる所もあるだろう。ターゲットと言える選手が鈴木優磨くらいしかおらず、ハイプレスの頑張りにより蹴らせたロングボールを、京都CBが十分に抵抗を見せていて、簡単には起点を作らせていない。

先程、鹿島と京都は似ていると書いたが、思想面でいうと、両者ともに攻撃時の立ち位置をそれほど定めていない、選手の即興性にまかせている所だろう。30分頃になると、京都がどちらかと言うと、センターラインから守備をするミドルプレス、鹿島がボールを握る、という形になるのだが、鹿島がそれほど効果的な攻撃を仕掛けられているとは言えない時間が過ぎていく。鈴木優磨の動き次第と言ってしまうとそうなのだが、周囲の選手とのコンビネーションに苦労する様子が伺える。もちろん、ぴったりハマれば24分の仲間のシュートの様になるのだが・・。

京都は2連勝中だけあって、選手たちに自信というよりは落ち着きが出ているように見える。守備での無理なプレスもなく、マークの受け渡しも上手くいっている。これでカウンターで仕留められれば言う事無しなのだが、そこは相手との力関係によるだろう。

35分、福田のミスから奪われたボールを鈴木優磨がパスを選択するも、これは金子が良いカバー。金子のキャラクターとしてもアンカーはあっているように思える。38分にも自陣でのパスミスから際どいクロス。43分にもゴール前に出てきていた樋口のヘディングシュート。その間、京都は一美のポストプレーからサイド攻撃に繰り返すもゴールに至らず。前半はスコアレスで終了。

 

ハーフタイムに動いたのは京都。松田天馬に変えてアピが入り、523へとシステムを変更する。最初のチャンスは京都。右サイド深い位置で福田がボールをうばい、そのままカウンター。木下はシュートを打たされてしまったが幸先のいいスタート。京都の守備であるが、ボランチが2枚になったぶん中央が薄くなるが、そのスペースはCBの一人が前に出て消す運用になる。CBが前に出やすくなるのも3バックの効果。また、前線の3人が433よりも近い距離に立つことになり、連携からのロングカウンターをスムーズにするのもシステムチェンジの狙いだろう。

後半開始からはずっと京都ペースが続いている。鹿島は前半同様に442であるが、2トップの守備は、京都の3CB+GK+金子のボール回しに狙いを付けられず。時間が作られるがゆえに京都両サイドが高い位置を取り5バックの形になるため、鹿島4バックをはかなり困っていた。京都は安定したボール回しから両サイドが裏を取り、鹿島守備陣をゴール前に押し込む事に成功。システムチェンジが完全にハマっていた。相手のやり方にもよるのだが、3バックと4バックを併用できるというのは京都の強みでもある。この日の様に落ちついて相手を見れれば、十分にミスマッチを生かすことができる。

これは不味いと鹿島も54分、システムを523に変更。マッチアップをはっきりさせる事を優先。鹿島が523の形はあまり見られないのだが、それでも得意とするやり方よりも相手に合わせる事を岩政監督は判断したようだ。前半の出来から言っても、そのまま押し切る自信がなかったのかも知れない。57分には荒木を土居に、仲間を名古に変更。システムを噛み合わせた事で、個人能力の差から息を吹き返した鹿島。ボールを握り、京都ゴール前に迫るが、鈴木優磨の動きは悪く、なかなかシュートまでは至らない。

63分。京都は運動量を確保するために、福田を荒木、川﨑を福岡に交代する。同じタイミングで鹿島も松村に変わって藤井。こちらは攻撃の切り札としての投入である。

69分には鹿島はハーフスペースを付いた良い攻撃でチャンスを作るも、京都はなんとかしのぐ。ここでもシステム変更が実った形となる。5バックのはずなのに、ハーフスペースを付かれるのは何事かと、言いたい所ではあるが。

残りの20分は一進一退、と言いたいところではあるが、どちらのチームも攻撃のクオリティを出せなかったというのが本当のところだろう。この展開は鹿島が523に変更した時点で予想された展開ではあるのだけれど。ただ、鹿島の切り札のはずだった藤井を荒木が1対1でほぼ完璧に止めていたのはちょっと凄かった。

試合は0-0の引き分け。京都としては上位相手に貴重な勝ち点1となった。

 

ひとりごと

開幕戦でコテンパンにやられた相手に対し、臆せず引き分けに持ち込めたのは非常に有意義な結果と言えるでしょう。試合のスタッツとしてちょっと面白かったのが、両チームのスプリント数。鹿島が118に対し京都が98。暑さを割り引いても京都のスタイルとしてはかなり少ない数字が記録されてます。

シーズン開始前に自分がこんな解答をしてるのですが、その観点でいうと、鹿島戦はかなり良かった様に思います。前線からの守備についてプレスを掛けるのか、中央を閉めるのかの判断が良かったと思いますし、攻撃時に不用意なボールの奪われ方が少なく、全力スプリントで戻るシーンもありませんでした。これらの要因から、全体のスプリント数が抑えられ、最後の守備の粘り、安定にも繋がったのでは無いかと考えています。良い守備は良い攻撃から。