質問箱に似たような質問が来てました。京都サンガの次の試合で、出場できるCBに左利きしかいない事を受けての質問ですね。返信はしたのですが、上手いこと言えてない気がするので、もうちょっと補足します。
結論から言うと、CB二人とも左利きなのが問題というよりも、右CBに左利きの選手を置くのが問題になります。右CBのポジションでは、左脚を使ってプレーする事が不利を受ける場面があるからです。以下、例を挙げていきましょう。
(以下の文章は、右と左を入れ替えても成立するはずです)
プレスに弱くなる
CBがボールを持ったとき、相手FWが積極的にプレスを掛けてくることは見慣れた光景になりました。この時、右CBに左利きの選手がいると不利になります。
守備側の選手からみると、まず中央を固めるのが守備のセオリーです。そこからプレスを仕掛けると、内から外へ向かうことになります。
左利きの選手というのは左足の前にボールを置きます。すると、相手により近い位置にボールを置くことになり、プレッシャーをより受けやすい形になってしまいます。
相手にボールを奪われないためには、相手→自分の体→ボールという位置関係を作る事が大切です。ところが、右CBに左利きの選手を置くと、相手→ボール→自分の体という位置関係になりがちで、プレスに弱くなってしまいます。また、ボールの前に相手選手がいることになるので、パスコースを大きく塞がれていまうことにもなります。
CBのポジションでは安全が最優先され、プレスに対してある程度対抗出来ることが必要です。そのため、右CBの選手は右足を使ってプレーすることが求められます。
サイドチェンジがやりにくい
まず話の前提となるのが人体の構造です。人の脚は、外側から内側に向けて降るのが自然な動きです。反対に、内側から外側に向けて脚を降るのは窮屈な動きになります。窮屈な動きということは、上手く力を伝えられないということですね。そのため、狙ったところに強くボールを蹴るためには、外側から内側に脚を降ることになります。
これが何かというと、ボールを蹴る方向にはある程度範囲があるということですね。左足でボールを蹴る場合、右方向には蹴りやすく、左方向へは難しくなります。図にするとこんな感じになります。
右CBの選手が正面を向いて左脚でボールを蹴る場合、サイドチェンジという選択肢が無いため、相手側からするとボールの来る方向が予想しやすく、守備がしやすくなります。
この時ボールを持った選手が左脚で左にサイドチェンジをするには、体の方向を左に向けないといけません。これでは次に守備側にボールを移動する方向が予想されて、サイドチェンジが出来たとしても、それ以上前進することは難しくなるでしょう。
それでは、右足でプレーする場合はどうなるか。右足でボールを蹴ると、体は正面を向きつつ、左方向に強いボールを蹴ることができます。正面にボールを蹴ると見せかけるフェイントが使えるという事ですね。
サイドチェンジをより有効にするためには、相手守備の予想を裏切る事が必要になります。右足でプレーするとそれが可能になります。
内側に巻くボール
人体の構造の話に関連しますが、蹴り足によってボールを曲げやすい向きと曲げにくい方向があります。ボールの外から内に回転を掛けやすく、逆は難しい。左脚で蹴った場合のボールの曲げやすさが下の図です。
蹴りにくい曲げ方とはいえ、脚の外側でけるアウトサイドキックを使えば可能なのですが、安全第一が求められるCBの選手が、精度の落ちるアウトサイドキックでパスをしようものなら、監督は渋い顔をするでしょう。
蹴り脚によるボールの曲げやすい方向がどこに影響するかというと、CBからサイドの選手へと出すパスが該当します。
例えば、右CBから右SBにパスを出す場合、左脚でパスを出すと直線的なボールになります。そうすると、ピッチの奥にボールを送ることが出来ず、相手守備者の前でボールを受けがちになってしまいます。
これが右足でプレーするとどうなるか。サイドラインを沿うような軌道のパスとなり、より奥へとボールを運ぶ事ができます。このようなボールを蹴ることで、相手守備の裏でボールを受けられる可能性も高まります。
サイドの選手にパスを出すだけでなく、ゴール前からクリアーする場合でも、左足でなく右足で巻くようなボールを蹴ると、より自分のゴールから離れた位置までボールを送れるでしょう。
以上、右CBの選手が左足でプレーした場合に、不利に働く場面を挙げてみました。この様なデメリットがあるため、基本的には右CBに入った選手は右足でプレーすることになります。それならば、素直に右利きの選手を配置するのが自然でしょう。
左利きCBが増えた事について
以前はCBが右利きばかりで、2CBを両方とも右利きで組んでいた。というのはその通りです。ただし、それは妥協した結果です。左CBには左利きの選手を置くのが理想です。ただし、左利きというのはそもそも数が少なく、CBに至っては相当レアです。
右利きの選手で2CBを組んでいたとしても、左CBには左足でも十分にプレーできる選手が選ばれていたはずです。ただ、そんな選手が居ないチームはもちろんありますし、損をするのは分かっているけれどもしょうがなく右利きを左CBに起用していた、というのが実情です。ピッチ上の選手配置が理想通りで有ることは、実際にはほとんど無いでしょう。
最近になって、左利きのCBはたしかに増えてきています。これはビルドアップの価値が見直されてきて、CBにもボールを前進させられるスキルが要求され、左利きのCBが必要とされた結果なのだと想像しています。
そういえば京都サンガのDFラインには左利きが多いですね。麻田、イヨハ、三竿、植田、特別指定の喜多と飯田もそうですかね。これだけ集まるのは滅多に無いことでしょう。ただそれでも左利きを2CBにするのが良いわけでは無いですけどね。