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2019年 J2リーグ 第2節 京都サンガ VS 鹿児島ユナイテッドFC ~2部リーグで表現されるゲームモデル~

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◆似たもの同士の対決

フォーメーションはどちらも4-1-4-1。そしてアンカーの庄司、中原秀人を軸に丁寧にボールをつなぐスタイルも同じ。まるで双子のような両リームの試合でした。

違いがあるのは、まず守備方法、どちらの方も中盤の主にインサイドハーフの選手が前に出て4-4-2の形になるのですが、京都はより人につく傾向が強いのに対し、鹿児島は選手同士の間を狭くしてパスコースを消しにかかっていました。

個人的に鹿児島の守備がうまいなと思ったのは、前に出たインサイドハーフがちょうどハーフスペースを塞ぐように前に位置取りしていたことです。京都側からすると攻撃の糸口としたいハーフスペースを止められている格好になったので、なかなか前進できずに苦労していました。

また京都の人に食いつき気味の守備は、逆に鹿児島に利用されていたように思います。特に左サイドの宮城と冨田の間、4バックの泣き所を鹿児島の右サイド、野崎、酒本、赤尾がしつこく突いてチャンスを作り出されていました。

なんとなくですが鹿児島は前節の京都を研究して対策を取っていたように思います。そしてしっかりと対策を実行してきた。鹿児島はJ3から昇格してきたチームとはいえ、戦術の柔軟性も高い。特にワントップのハンヨンテはパワーとマークを外す巧みさを備えて良いFWで、J2リーグでも十分に結果を残せるチームなのでは無いかと思います。それでも鹿児島の弱点と言えるのが、選手配置のバランスが崩れると以外に脆さがあることでした。

京都の2得点はいずれも鹿児島の弱点をついたものでした。

宮吉の1点目は鹿児島がDFラインからのロングボールを使ったことで、前線と最終ラインの距離が開いてしまい、京都がカウンターをしかける形になりました。

重廣の2点目は、GKからつないで移行としたときに、大きく開いた鹿児島CBが精度の低いフィードを出したところを京都の選手が見逃さずに奪い取り、中央の空いたスペースをすばやく使ったことが得点につながりました。

前回の記事でも触れたのですが、京都はボールを丁寧につないでいくポゼッションスタイルなのですが、この試合の得手はいずれもカウンター気味であって、それもいかにもサッカーの試合っぽいなと思ったところです(笑)

 

後半は退場者が出て非対称なゲームになってしまいましたが、前半のはお互いに攻守に戦術的な狙いを持っていて、力量差も同じくらいで大変おもしろいゲームでした。繰り返し見直しても色々と発見がありそうです。

 

 

◆京都のボール保持

シーズンが開幕して大きなインパクトとなった京都のボール保持について少し触れていきましょう。

 

前節の新潟戦では庄司がCBの間に落ちる動きをして、3バックに変化することでボール保持を安定させました。一方で今節の鹿児島戦では庄司は落ちる動きを行いませんでした。この違いは相手FWの人数の差によるものです。

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相手FWが2トップの場合には3-2の形に、ワントップの場合には2-3の形を取っています。ここでポイントとなるのが京都の選手は相手の人数を見て、形を変えていることです。

ここから、京都のDFラインによるボール保持が形ありきではなく、「どうすればボールを前進できるのか?」という問に対する答えが選手間で共有されていることが解ります。

前回の記事でマンチェスターCのコピーをしていると書いたのですが、それが単純に配置を真似たのでは無いことがこの試合で見て取れました。どんな目的のためにその配置をしているか、コンセプトまでもしっかりとコピーできているように思います。

 

もう一つ、試合を見ていて気づいたことなのですが、京都の選手はボール保持しているときにカバーポジションを取ることを、とても大事に、そして徹底していました。

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カバーポジション(これは自分が名付けてます)は図で示したように、ボール保持者に対して斜め後ろのポジションを取ることです。これによって、相手に前を防がれてパスコースが見つからないとき、カバーポジションの選手にボールを渡して、攻撃をやり直す事ができます。一種の安全装置です。また、カバーポジションに選手を配置しておけば、もしボールが奪われるような事があっても、相手に寄せる事が可能となります。

 

特にDFがボールを持っているときには、気をつけてカバーポジションを取るようにしています。今年の京都がボールを持つ時間を長くできているのも、このカバーポジションの徹底のおかげと言えるでしょう。

 

最後に、相手が上手くプレッシャーを掛けてきたことで、自陣深い位置のゴールキーパーまでボールを戻さざるを得ない場合を見ていきましょう。

 

この様な状況になっても京都はボール保持を続けようとする仕組みを用意していました。 

vimeo.com

動画を用意しました。ゴールキーパーの清水までボールを返したときに、前に出てきた相手の頭を越すようにパスを行っていました。この時に受けるのは右サイドの小屋松、重廣。相手のDFとMFの中間でボールを受けようとしています。

 

動画ではあまり上手く行ったと言えないのですが、このパスの成功率を上げることができれば、相手が高い位置までプレスを掛けるのを躊躇させることになり、より京都がボール保持をしやすくなる可能性も出てきます。GKにとっては難しいプレーなんですけどね。ぜひチャレンジして欲しいところです。

 

 今年の京都の試合を観て感じたのは、思った以上にデザインされたボール保持を用意しているという事です。前回紹介した5レーンもそうなのですが、DFラインからのボール前進を見ていても、指導者がプレーの目的と手段を理解し、それを選手にもしっかりと反映されています。

 

何が起こってこの様なチーム作りが行なわれるようになったのか、誰が行っているのか、不思議で仕方が無いところはあるのですが、応援するチームがはっきりとプレーのコンセプトを示してきたことに、嬉しさを感じつつ、これからもゲームを追っていきたいと思います。