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2020年 京都サンガF.C. シーズンまとめ ~積み上がるは砂上の楼閣~

今年は連戦が続いたのもありますし、個人的に忙しかった事もあって、さっぱり試合レビューをしていなかったのですが、一応今年の京都サンガのまとめを書いておきましょう。

と、その前にあちらこちらで話題になった金久保のインタビュー記事です。

www.jsgoal.jp

過不足なくチーム状況を表していて、ぶっちゃけこれだけでもシーズンレビューにして良いくらいです。一人の選手として、上手く行かないチームに対する歯がゆさを正直に話してくれていました。

 

とは言ってもブログでやる以上、これで終わらせるのもあれなので、今年の京都を見ていて思ったことを書いていきましょう。シーズンレビューという名の感想文です。

 

 

振るわなかった成績

2020年シーズンは、前年度コーチであった實好さんが監督に就任し、選手補強も積極的に行われました。その結果は42試合で16勝11分15敗の勝ち点59の8位まずはこの結果をどう捉えるか。

順位としては去年と同じなのですが、勝ち点差を見てみると上位3つとは21点以上の差がついています。明らかに去年よりも人件費が上がっていることを考えると、この成績では實好監督に対する評価は厳しくせざるを得ません。

またサポーターからの評価もすこぶる良くありませんでした。「監督の力で試合に勝ったという印象がほとんど無かった」からでしょう。

チームの構築という視点では、シーズンが進むにつれて他のチームの練度があがっていく流れについていけず、また試合単体で見ても、相手に合わせた戦術的な工夫もあまり見えず、選手交代をするたびに状況が悪化していくのもイメージとしては良くなかったです。

1年で事実上の解任になったのも不思議ではありませんね。

 

見通しの甘かったチームビルディング

続いてはチーム作りのコンセプトについて。

これは完全に後出しになるのですが、サンガスタジアムby KYOCERAで行われたセレッソ大阪とのこけら落としマッチ。その試合を観戦した時に、「ああこれは去年とはまったく異なるコンセプトだな」と感じ、それと同時に「このやり方でどこまで行けるのか見ものだ」とも思った事を覚えています。

 

實好さんは前日本代表監督である西野さんの影響が大きいのでは無いかと考えています。ガンバ大阪では選手と監督の関係であり、契約満了を通達されるも西野監督の強い要望により再契約された事もあるようです。また、西野さんが名古屋に就任した時には、實好さんはコーチとして起用されました。

過去の西野監督評として以下の様なものがありました。

實好さんも似たようなコンセプトでチームを作ろうとしていたように思います。

この様に選手を主にして監督はその調整役としてチームを作っていく手法は、それほど違和感のある物ではありません。ただ今シーズンの日程にあっていたのかと言うと・・・?

選手を主にしたチーム作りでは、完成度を上げるためにメンバーを固定して試合を重ねることで意思疎通を深めていく必要があります。

ところが今年は異例中の異例のシーズンです。中2日、中3日が続く日程が壁となりました。試合を重ねるごとに選手のコンディションは落ちていき、トップフォームをなかなか整えられません。その状態で選手同士で連携を深めるのは困難な作業だったでしょう。そして選手が変わってしまうと、また1からやり直しという事になってしまいます。個人的には、選手を固定する必要がある手法を取るには、今年の日程は無理があったのでは無いかと考えています。

では通常のシーズンの様に十分に試合間隔が空いていれば可能性はあったのか、という話になります。

 

定まらなかったチームの方向性

シーズン序盤の京都には、上手い選手が守備にがんばれるという評価がありました。バイスを中心に5人でスペースを埋めて、一列前の3人が粘り強く守備を行い、少ないチャンスをものにする、という展開の試合が確かに多かった様に思います。

ただ、試合を重ねるにつれてそうしたスタイルを取っていた理由が徐々に明らかになっていきました。今年の京都はまったくボールを持てないチームだったのです。より正確に言うと、ボールを持っても何も出来ないということです。

フットボールラボのデータの引用します。

京都サンガF.C. 2020 日程・結果・試合比較 | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB

試合結果をボール支配率でソートすると傾向が見えてきます。

・ボール支配率 49%以上

3勝7分10敗  得点17 失点30

・ボール支配率 49%未満

13勝4分3敗 得点30 失点15

分かりやすい結果が出ていますね。

 

今年の京都は、相手に一旦引かれてしまうと効果的な攻撃を仕掛けられませんでした。相手に前に出てもらわないと攻撃が成立していなかった事がデータからも読み取る事ができます。

ウタカを筆頭に、スペースがある状況では個人の技量を存分に発揮して得点を奪えます。一方で相手の守備ブロックをボールを動かし、グループで崩していく作業を大変苦手にしていました。

 

組織的な攻撃が出来なかったという事になるのですが、これはチーム作りの手法に起因していたのでは無いかと思います。

選手が主体となり、チームのやり方を決めていく。聞こえは良いのですが一つ落とし穴があります。選手個人の判断にまかせると、どうしても小さい局面での問題解決に注目し、チーム全体の利益になかなかつながっていかないのです。

ビルドアップを例に挙げると、ボランチがDFラインに落ちる動きがよく見られました。ボランチ本人からすると、前を向いてボールを受けられるという利益を得ているのですが、チーム全体で見ると、前方の人数が少なくなり、すぐに手詰まりを起こしてしまいます。

また個人に判断を任せることで、どうしても自分の得意(と思ってる)プレーにこだわってしまい、単調な動きを繰り返す様子も見て取れました。

チーム全体に影響力があり、調整役となれる選手がいればよかったのですが、京都に限らずJ2というカテゴリでは、それほどの選手はなかなか居ないでしょう。

 

調整役という視点から見ても實好監督には疑問に思うところがありました。前述のとおり、成績からみると典型的なカウンタースタイルだったのですが、監督はどうもそれを良しとしていない様子が伺えました。

「主体的にゲームをすすめたい」「前から守備をしたい」

こういうニュアンスの言葉が何度も聞こえてきました。監督が本当にやりたかったのは、ボールを持って試合の主導権を握るスタイルだったのでしょう。そしてこの監督の指向と実態のギャップは、プレーと成績の不安定さを引き起こします。

カウンターで勝ち点を稼ぐ→ボールを持つスタイルに挑戦する→結局上手く行かない→またカウンタースタイルに戻る。このループを何度か繰り返し、シーズン終盤には何をしたいのか良くわからないチームが出来上がりました。

開幕からほぼ3バック、3412か343のどちらかだったのですが、この並びも果たしてベストだったのか。加えて、今年の京都のベストメンバー、どの11人がそうであるのか悩んでしまうのも今季の象徴ですね。

監督としてコンセプトを提示しつつも実現方法を与えられない。実態にそった現実的な策も徹底できない。指揮官としてはまだまだ力が足りていなかったというのが、評価になるでしょうか。

シーズン前は選手との距離感が近く、良い関係を築いているようにも思えましたが、いつの頃からか試合中の飲水タイムで選手全員が集まることがなくなり、飲水タイムがただの飲水タイムになっていたのは、見ている側からすると非常に切なかったですね。想像以上にチームの状況は良くなかったんじゃないかと思います。

 

戦術的な影響力が大きかった選手達

すこし選手にフォーカスを当てます。ウタカ、バイスはそのとおりなので、ちょっと捻ったメンバーを紹介してみます。

 

・野田 隆之介

ウタカという絶対的なエースのサポート役としては一番の働きでした。攻撃時には最前線でマークを引きつけ、守備時には相手アンカーへのパスコースを防ぐ。攻守でウタカとの立ち位置が変わり、身体の負担が大きいプレースタイルでもありました。FWが変わると守備のやりかたまで変わってしまう状況で、効果的な守備が出来ていたのはポイント高かったです。

序盤に重用されたのですが、疲労が思いの外大きかったのでしょう。シーズン終盤になると、コンディションを明らかに崩していて、とても満足にいくプレーができる状態では無かったでように思います。過密日程がなければ、起用方法をもっと気を使われていたらと、たらればを並べてしまいますね。

 

・曽根田 穣

非常に運動量の多い選手でした。532システムでは中盤の守備の強度を保つためには欠かせない存在でした。序盤の怪我は非常に痛かったです。復帰してからは仙頭とウタカと共にカウンターを仕掛けられる選手として活躍してくれました。

運動量を特徴とする選手はチームに一人は居てほしいタイプです。それでもただの便利屋で終わってしまった感もあり、正しい使われ方であったのか?という疑問が残る選手の一人でした。

 

 

・上夷 克典

ビルドアップがだめ、組織的な攻撃がだめ、散々書いたのですが、いっときだけ、機能している時期がありました。その時DFラインに入っていたのが上夷です。

CBながら足元の技術が高いだけでなく、自らが中盤に上がることで、後ろに重くなりがちな全体のバランスを整えて、ボールの前進を助ける動きのできる非常に戦術眼にすぐれた選手でした。

ただそのバランス調整も結局は個人の判断で行っていたことであって、上夷が怪我で戦列を離れるとバランスはあっという間に崩壊しました。いったい何をしていたんでしょうか?

 

まとめ

チーム作りの実験的な意味合いでも、興味のあるシーズンではありましたが、結局は失敗に終わりました。

そうはいっても、今年は非常事態とも言える環境で、リーグ戦が最後まで終われた事だけでも良しとしなければいけないのかもしれませんね。それでは皆様よいお年を。