Take it easy

サッカーブログです。

2021年 J2リーグ 15節 アルビレックス新潟 VS 京都サンガ レビュー

f:id:tomex-beta:20210526152334p:plain



新潟VS京都。蹴球メガネーズひらはたフットボールクラブでも取り上げられるほど、非常に注目度の高い試合になった。もちろん勝った方が首位という状況だから、というのもあるけれど、もう一つ興味を惹くポイントがあったからだと思う。それは異なるプレースタイルのぶつかり合い。新潟のポゼッション、京都のプレッシング、どちらもしっかりと色が付いている。

異なる特徴を持ったチームが対戦するとフットボールは面白い試合になりやすい。お互いに自分たちの強みを押しだし、弱みを隠そうと苦心する。90分の中で駆け引きの繰り返しから勝負の醍醐味を味わい、それでもままならないフットボールの難しさも感じられたりするからだろう。

果たして、この試合ではどちらが言い分を通せるだろうか。

 

ホーム新潟は右サイドに初スタメンの三戸を除いて前節と変わらず。アウェイ京都は、前節ベンチ外のウタカが先発に復帰。また三沢、武富がスタメンとして起用された。

 

-------

キックオフ。1万人を超えるホームの手拍子に押されて、新潟はいきなりチャンスを作る。本間至恩の裏抜けから、鈴木孝司のヘッド。そして縦パスをカットしてからのカウンター。京都はいきなり出鼻をくじかれてしまった。

ボールを持ちたい新潟に対して、それでも京都は前から激しいプレッシングをしかける。ウイングの松田と武富が鋭くボールによせてプレッシャーを掛ける。この2人はウタカの分まで走らなければならない。大変な役目だ。

序盤の展開は戦前の予想通り、キックオフから続く京都の代名詞とも言えるプレッシング、それでも新潟はボールをつないでしまう。10分、右サイドに人数を掛け突破に成功。京都をゴール前に押し込んで試合のペースを掴む。京都側からするとこの展開はちょっと早い。いや、早すぎる。正直もっと新潟のビルドアップを妨害出来るのでは無いかと思ってた。

京都はどうしてもボールを奪う位置が低くなり上手く前に運べない。だいたいボール保持が上手いチームはプレスも上手い。元から新潟は守備にエネルギーをしっかり使うチームであるが、この試合でも連動したプレスで京都に良い形を作らせない。ようやく京都の攻撃らしい攻撃が見えたウタカのシュートは18分。試合の主導権は、はっきり新潟が握っている。

-------

給水タイムが開けて、第2クオーターの開始。

ここらへんで気がついたのが新潟の攻撃方向。極端に右に人を寄せている。時には左サイドに居るはずの本間至恩まで出張してきているのには驚いた。右に人を寄せるということは当然に左には人が居なくなる。相手にボールを奪われて逆に持っていかれるとそれだけで大きな前進を許してしまう。バランスを重んじるスペイン人監督にしてはちょっと不思議な気がする。荻原の攻撃力を削ぐ、荻原をボールの取りどころにする、あたりが考えられるけれど、本当のところはどうだったんだろう。アルベルト監督に聞いてみたい。

極端な右攻めが功を奏したのか、このゲームが新潟のものになりつつあるのは変わらなかった。35分、FKからの鈴木のヘディング、38分、左ポケットからの三戸のドリブル突破。アディショナルタイムでは、中央でボールを受けた本間至恩のシュート。しかし、いずれもGK若原が止める。今日の若原は頼りにして良さそうだ。

いい加減我慢できなくなったバイスが前に出始め、京都の偶発的なチャンスから荻原のシュートがGK正面に飛んだところで前半終了。

三沢がスタメンであった事を踏まえると、京都の思惑としては、もう少しボールを持ちたかったんだろう。新潟がプレスの上手さは想像以上だった。一方で新潟のボール保持の上手さは想定内。無闇にプレスを掛けずにじっと我慢を選んだ。それでもチャンスを作られてしまったが・・・

新潟としては優位に試合を進めていただけに1点は欲しかったところだろう。右サイド攻撃はある程度うまく行ったものの、京都に頑張られてしまった印象はある。

-------

京都はハーフタイムに2人交代、荻原→本多、攻撃力を犠牲にしてでも左サイドを封じ込めたい、どちらかと言うと「強いられた」交代。三沢→福岡の交代はプラン通りだろう。後半から本当の姿を現す新潟に対して、プレッシングの強度を高めて勝負を掛ける。

-------

 後半開始。またしても左サイドからのクロスに鈴木孝司のヘッド。この鈴木孝司という選手、とにかくクロスボールに触るのが上手い。ゴール方向にしっかり飛ばし、前半同様にいきなりあわやという場面を作る。

 この試合の両チーム、目的は違えどビルドアップはほぼ同じ形を採っていた。CBが大きく開き、GKが中央に入る。そしてボランチの1人(アンカー)頂点にした菱形を作る。またそれに対抗する形も同じで、FWが左右のCBに付き、中盤から1人前にでてボランチ(アンカー)に付く。そうしてGKにボールを持たせ、出てきたボールをカットする狙い。両チーム共にまったく同じ持ち方、奪い方をしていたにも関わらず、ボール保持に差が出たのは、新潟の選手たちのロビングの上手さ。赤坊主が印象的なGK阿部のキックの上手さが特に目立つ。ちょっとした差が伝搬し大きな差となるバタフライ効果というものがあるが、この試合の蝶の羽ばたきは阿部のキックだった。

時間が進むにつれて、新潟のパススピードが一段階あがり、縦パスを通す回数も増えていく。50分、武富→荒木。京都はプレスの強度を保ち、なんとか反撃の糸口を見つけたい。

-------

 試合が動いたのは57分。それでも諦めずにプレスを仕掛けた京都がスローインを得たところから。一度は跳ね返されたボールを奪い返した川崎が流れでシュート。見事なミドルシュートを決めてみせた。どっちつかずのボールを制するというチームスタイルがそのまま表現された様なゴール。京都が中央突破でよく見せていたのが、相手を背負った前に選手に当てて落としてシュートを打たせる動き。フットサルでいうピヴォ当てになるのだが、シュートを打てるスペースを無理やり作る工夫だ。それがようやく実った。そしてプロ初ゴールが重要な得点になった川崎は「持っている」選手なのかも知れない。

-------

リードした事でプレスというよりは前に出るのを控える京都。荒木とウタカによるカウンターを仕掛けるも得点にはならず。前節休んだウタカであるが、ここまで見た感じでは新潟戦に備えたというよりは、純粋にコンディションが悪いっぽい。それでも相手は気にはしてくれるかもしれないが・・・

新潟が裏抜けが得意な谷口を投入したところで、ゲームは勝負の第4クオーターへ。

-------

 最後のエネルギーを振り絞り、ゴールに迫る新潟。ひたすら自陣で跳ね返す京都。これまでの試合でもよく見た光景。ピンチにはなるけれどシュートは決めさせない守備。理屈では説明できないのだけれど、思うに京都は異常なまでにストレスに強かったりする。上手く行かなくて当たり前という割り切りにも近いメンタルは、わざと試合をごちゃごちゃに仕向けるプレースタイルからも来ているんだろう。

危ういシュートも若原が見事なセーブを見せる。ぎりぎりであったとしても「なんてことないですよ」という顔が出来るのはGKに必要な資質だ。勝利を引き寄せる活躍だった。

開き直った京都の守備が実り、スコアはそのままでタイムアップ。ホームのスタジアムは静寂に包まれた。

-------

期待通り、お互いの持ち味を見せあい、どちらに転ぶのかわからない好試合となった。試合後のアルベルト監督、「サッカーがときには不公平な試合結果をもたらすという典型的な展開になったと思います。」素直に悔しさを表したコメントどおり、試合はほぼ新潟のものだったであろう。ただ一瞬、シュートが決まった場面だけ綻びが生まれてしまった。心が折れずに綻びを作り出した京都を褒めるべきだろうか。

 

順位に偽りはなく、この2チームがJ2でも上位を持っているのはこの試合を見ればすぐに分かる。幸いにも我々はもう一度この対決を楽しむことができる。その時にはぜひ満員のスタジアムで。素晴らしい舞台が用意されることを願うとしよう。